研究概要 |
ナイシン耐性リステリアの耐性機構の解明を試み,以下のような結果を得た。 1.ナイシン耐性リステリア菌体とナイシンとの相互作用を調べたところ,ナイシン耐性株へのナイシン吸着量は, 親株よりも減少していた。また,ナイシン耐性株における菌体表面電荷の状況をシトクロムCの吸着性から評価した結果, すべての耐性株において親株よりも負電荷が低下していた。さらに, 有機溶媒親和性からナイシン耐性株の細胞表面疎水性度を調べ, その程度は3株の耐性株で異なるものであった。これまで, ナイシン耐性リステリアにおいて菌体表面疎水性の低下は, ナイシンとの疎水性相互作用を低下させるため, 耐性機構のひとつの要因と考えられてきたが,本研究の結果から菌体表面における疎水性の変化はナイシン耐性の獲得に伴う特性変化のひとつではあるものの, ナイシンに対する耐性機構において主な要因ではないと推察された。 2.ナイシン耐性リステリアの細胞壁分解酵素に対する感受性を調べたところ,ナイシン耐性株においてラビアーゼとリゾチームに対する感受性の低下が認められた。したがって, ナイシン耐性の獲得に細胞壁の構造変化も関与していると推察された。 3.ナイシン耐性株のタンパク質発現を調べたところ, 分離耐性株3株のうちATCC7644R株でのみ細胞膜に局在するタンパク質の発現が親株と比べて異なっていたことから,ストレスタンパク質の発現がナイシン耐性機構に関与していると推察された。
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