研究課題/領域番号 |
23580275
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
関 秀司 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (10179327)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ヨウ素低減 / 食用海藻 / 競争吸着法 |
研究概要 |
平成23年度の到達目標とした4項目に対して以下のような実績を挙げた。1.海藻のヨウ素脱着用溶媒の選定:純水,0.05M希塩酸,0.1M塩化カルシウム溶液および海水を溶媒として乾燥コンブのヨウ素溶出実験を行った。いずれの場合も乾燥コンブの約10倍量の溶媒に20分間浸すことにより70~80%のヨウ素が溶出した。処理後に再乾燥したコンブの重量損失は純水(50~60%)>希塩酸(40~50%)>塩化カルシウム溶液=海水(20~30%)であり,塩化カルシウム溶液または海水が溶媒に適していることを明らかにした。2.海藻および陰イオン交換樹脂のヨウ素吸・脱着実験:乾燥コンブ中のヨウ素は上記のいずれの溶媒においても洗浄のみで70~80%が溶出したが,残りの20~30%はコンブ中に強く吸着し洗浄だけでは溶出できないことを明らかにした。陰イオン交換樹脂については,ヨウ素吸着が平衡に達するまで約3時間を要すること,吸着量は塩素イオンの影響を強く受け海水と同濃度では吸着量が1/3以下に低下することを明らかにした。3.上記の吸・脱着反応のパラメータの決定:乾燥コンブから溶媒に溶出したヨウ素濃度C [mg/L]と溶媒量V [L]の間に「C = 1.14/V」の関係があることを明らかにした。陰イオン交換樹脂のヨウ素吸着がラングミュア吸着等温式に従い,飽和吸着量と吸着定数がそれぞれ0.002mol/gおよび36000であることを明らかにした。4.競争吸着法による海藻のヨウ素除去実験:H23年度の目標値(ヨウ素除去率90%以上,ヨウ素含有量200 ppm以下)に対し,乾燥コンブの10倍量の0.1M塩化カルシウム溶液または海水を溶媒として乾燥コンブの10%の陰イオン交換樹脂を添加した競争吸着法により,除去率92%およびヨウ素含有量120 ppmを達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H23年度の到達目標である乾燥コンブのヨウ素除去率(90%以上)とヨウ素残存量(200 ppm以下)を上回る成果(除去率92%,残存量120 ppm)を達成した。また,溶媒として塩化カルシウム溶液または海水が適していることが明らかになったことから,当初の実験計画にはなかった陰イオン交換樹脂のヨウ素吸着に及ぼす塩素イオンの影響についても実験とモデル解析による検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現時点までの研究が順調に進行していることから,H24年度は当初の研究計画の通り,H23年度の研究成果を基に以下の研究を推進する予定である。1.H23年度に決定した乾燥コンブと陰イオン交換樹脂のヨウ素吸・脱着パラメータを用いて競争吸着モデルを導出する(H24年度目標)。2.海藻重量,吸着剤重量および溶媒体積などの条件を変えた競争吸着実験を行い,上記の競争吸着モデルによるシミュレーション結果と実験結果を比較することによりモデルの正当性を検証する(H24年度目標)。3.上記のシミュレーション結果に基づいて流通式装置を設計・製作し,段階的なスケールアップを図る(H24~25年度目標)。
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次年度の研究費の使用計画 |
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