研究課題
(1) 成長ホルモン(GH)遺伝子組換えスーパーサーモンの作出:デブリンら(1994)に倣い、サケ由来のメタロチオネイン-B-プロモーターに構造遺伝子・サケGH遺伝子を融合したオールサーモン発現ベクター・OnMTGH1を構築した。そのベクターをギンザケ(Oncorhynchus kisutch) 受精卵にマイクロインジェクション法により導入し、組換え魚を作出した。このように作出・維持した系統であるM77系を用いた。それらをカナダ国立ウエストバンクーバー研究所内の特殊隔離飼育施設で飼育した。 (2) 試験区の設定:試験魚を三つの区に分け飼育した。すなわち、非組換え普通魚、それと同年齢で食餌制限した組換え魚、さらに一歳年下(当歳魚)の組換え魚の三区である。これらの方法により、三つの区ではサイズをほぼ揃えることができる。 (3)普通魚と組換え魚における摂餌後の代謝の違いについて:GHがもたらす組換え魚における高成長のメカニズムを推定するため代謝産物の比較を行った。すなわち上記3試験区に朝9時に餌を与え、一定時間後に各組織を採取した。肝臓と筋肉について分析用試料を調製し、それらに含まれる代謝産物について主にキャピラリー電気泳動TOF-MSシステム(アジレント社製)を用いてメタボローム分析による代謝産物の一斉分析に供した。その結果、普通魚と組換え魚ではグルコース代謝などの一部に相違のあることが窺われた。現在その結果についてはさらに解析中である。すでに我々は組換え魚における成長関連遺伝子の発現動態を摂餌との関係で調べており、今後は今回認められた両者における代謝の相違と各種遺伝子発現、および摂餌との関連の解析に興味が持たれる。
2: おおむね順調に進展している
今回の研究にあたり必要な組換え魚の作出に成功し、その系統を維持することが出来た。それを馴致・飼育して当初の研究計画の項目に沿って実験を実施した。実験遂行中は試験魚の斃死などは認められず、順調に組織サンプルの採取を行い、その後各種の分析に供した。目下その分析データを解析しており、この結果を基に次年度以降のさらなる発展が期待できると考えられる。
従来の計画と特に変更はない。すなわち、平成23年度の実験により得られた結果を基に組換え魚における高成長のメカニズムを推定する。具体的には、食欲などを増進させる因子の発現を遺伝子レベルと代謝産物レベルで解析する予定である。
物品費により主に遺伝子解析用の試薬や遺伝子発現解析に用いるDNAチップなどを購入する。さらに旅費を使って研究成果の一部を国内外の学会において発表する予定である。
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養殖
巻: 48 ページ: 64-67
Comp. Physiol. Biochem.
巻: 28(suppl.) ページ: 142-142