研究課題/領域番号 |
23580277
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中野 俊樹 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10217797)
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研究分担者 |
白川 仁 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40206280)
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キーワード | 国際情報交流(カナダ) / 農林水産物 / 水産学 / 栄養学 / 組換え食品 / バイオテクノロジー |
研究概要 |
(1) 成長ホルモン(GH)遺伝子組換えスーパーサーモンM77系の作出と飼育:カナダ水産海洋省のデブリンらにより開発されたオールサーモン発現ベクターOnMTGH1を導入したギンザケ(Oncorhynchus kisutch) M77系を、カナダ国立ウエストバンクーバー研究所内の特殊隔離飼育施設で飼育し本実験に使用した。 (2) 非組換えギンザケ普通魚の飼育:スーパーサーモンと比較するため、非組換えギンザケ当歳魚を地元の養鱒場より購入し、東北大学大学院農学研究科内で飼育した。 (3)普通魚と組換え魚における摂餌後の代謝産物の違いについて:前年度に引き続き、組換え魚と非組換え魚の代謝産物についてメタボローム解析を行った。その結果、肝臓と筋肉におけるATPなどのエネルギー生産に関わる物質のレベルが両者で違いのあることが示唆された。現在その結果については個体数を増やして分析を続け、さらなる解析を進めているところである。 (4)ギンザケに及ぼす各種ストレスの影響:組換え魚では普通魚と比較して種々のストレスに対する生理学的反応や耐性などが異なることが予想される。それらを明らかにすることは、養殖魚の食欲や生産性について議論するためにも極めて重要である。本年度は組換え魚の対照実験として、非組換えギンザケ普通魚を用いてヒートショックによる熱ストレスが生理状態に及ぼす影響を調べた。その結果、熱ストレスにより成長関連遺伝子の発現レベルが変化することが判明した。今後はGH組換え魚に対する同様のストレスの影響を検討すると共に、メタボローム解析を進め、組換え魚において特徴的な高い成長性や食欲の発現などに関するメカニズムの解明に繋がる知見を得ることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き試験魚の代謝産物の解析を行い、さらに非組換え普通魚を用いてストレスなどとの関連で成長関連因子の発現について検討している。これらの結果を基に、次年度では、組換え魚における食欲発現などのメカニズムが考察できると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
計画に大きな変更はない。平成24年度に得られたデータを基にさらに解析を進め、それらを非組換え魚普通魚のデータと比較する。そして組換え魚における高い成長と食欲の促進発現メカニズムについて考察する。推測されるメカニズムを飼育実験を通して実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、平成24年度の研究を効率的に行ったことで生じた未使用額であり、平成25年度請求額と合わせ当該年度の研究のために使用する予定である。 平成25年度は物品費により成長および食欲に関連する遺伝子の解析用試薬・キット類、成長関連因子のタンパク質レベルにおける分析のために必要な特異的抗体の作製を行い、飼育実験に供するギンザケなどを購入する。さらに、旅費により得られた研究成果を国内外の学会などで報告し、加えて学術誌などで論文発表することなどを通じて研究成果を発信・アウトリーチする。
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