研究課題
(1) 成長ホルモン(GH)遺伝子組換えスーパーサーモンの作出と飼育:カナダ水産海洋省のロバート・デブリンらにより開発されたオールサーモンGH発現用ベクターOnMTGH1を導入したギンザケ(Oncorhynchus kisutch) M77系をカナダ国立ウエストバンクーバー研究所内の特殊隔離飼育施設で飼育・蓄養し、本実験に使用した。本種はGHを様々な組織で過剰発現しており、血中のGHレベルも高いことが確認された。(2) 非組換え魚と組換え魚における代謝産物の動態に及ぼす栄養状態の影響について:代謝産物の動態の違いを明らかにするため3つの試験区を設けた。すなわち、①非組換え普通魚(対照,1歳魚)区、②GH組換え魚(当歳魚)区、および③給餌制限組換え魚(1歳魚)区の3区を設定し、サンプリング時の個体の大きさを揃えた。前年度、非組換え魚普通魚と組換え魚を用いて摂餌後の代謝産物の動態についてメタボローム解析を行ったところ摂餌個体では組換え魚において解糖系などの代謝が亢進しており、それは給餌を制限することでさらに増大することが分かった。また食欲は非組換え魚に比べ組換え魚で非常に高かった。以上の結果を受け、前述の3試験区を用い数週間絶食し個体を貧栄養状態にしたところ、全試験区で解糖系などに関わる代謝のアクティビティーの低下が認められた。しかしながらその中でも組換え魚では解糖系代謝のレベルが他の試験区に比べ有意に高かった。すなわちこれらのことは種々の代謝系のアクティビティーが非組換え魚と組換え魚では異なっており、組換え魚では常に高いレベルを維持してATPなどのエネルギーを生産していることを示唆している。今後は個体数を増やし条件等を変えてさらにメタボローム解析を進めることで、組換え魚の極めて高い成長性や食欲の発現などのメカニズムを解明するための情報が得られるものと推察される。
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PLoS ONE
巻: 8 ページ: e71421
10.1371/journal.pone.0071421