研究課題
キチンは直鎖型の構造アミノ多糖類であり、地球上で最も豊富なバイオマス資源とされている。今回、亜熱帯海域に生息するヤシガニ甲殻よりキチンを精製し、その構造情報を得ることを目的として、機器分析を試みた。まず、ヤシガニ甲殻由来精製キチンの表面組織を電解放出型走査電子顕微鏡により観察したところ、エビやカニ甲殻に由来するキチンには見られない特徴的な規則正しい細かな網目構造(φ≒5.00μm)が観察された。一方、赤外線吸収スペクトルにおける吸収パターンは、α-キチンに類似したものであり、X線ディフラクトメトリーからも同様の結果が得られた。キチンはほとんどの溶剤に対して難溶性であることから、固体NMR分析法により13C-NMRスペクトルの測定を試みた。NMRスペクトルの測定は、JEOL ECA600を用い、4mm CPMASプローブにより、室温条件下で行った。その結果、23ppm付近(22.975ppm)にN-アセチルグルコサミン構造由来の特徴的なN-アセチルメチル基(N-COCH3)の鋭い吸収が観測され、さらに、174ppm付近(173.674ppm)にもアセチルカルボニル基由来と思われるカルボニル炭素(C=O)の吸収が観測された。ところで、ズワイガニ、ヤシガニのN-アセチルキトサンのゲル強度は、それぞれ408 gf、440 gfでほぼ同等であったが、アリリデン化することによりヤシガニ由来のキトサン-ホルムアルデヒドゲルのゲル強度は、ズワイガニ由来のものと比較して約6倍の強度(1504 gf)が認められた。以上、ヤシガニ甲殻由来キチンは、α-キチンであると考えらるが、その物理的な構造から、強い強度を有し、さらに、キトサンホルムアルデヒドゲルにおいても、エビやカニ由来のキチンから調製される同様のゲルに比べ、強度の強いゲルが得られることから環境に優しい新素材としての期待が持たれた。
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