研究概要 |
O型糖タンパク質(ムチン型糖タンパク質)の糖鎖を根元から遊離させるエンド型酵素,O-グリカナーゼ(endo-α-N-acetylgalactosaminidase, EC 3.2.1.97)は,多様なO型糖鎖構造のうちの非常に限定された構造にのみ作用するものしか見つかっておらず, O型糖 タンパク質の構造解析,機能解析の両面で大きな障害になっている.本申請研究は,これまでとは異なる基質特異性をもつ利便性の高 いO-グリカナーゼの開発が目的である.本酵素は,魚類体表粘質物から分離した,KDNを非還元末端糖に有する新奇糖鎖構造をもつ粘液糖タンパク質(O型糖タンパ ク質)を主な糖(炭素)源として培地に混合し,これを分解資化する細菌から探索した. 初年度には,基質となる魚類粘液糖タンパク質の精製を中心に研究を遂行した.二,三年目には,精製した糖タンパク 質を使用し,目的酵素を産生する最近のスクリーニング実験を開始した.試料には,土,海水,湖水などの環境由来のもの,鮮魚の体表および消化管表面をかき取ったもの,KDN含有糖タンパク質を粘液に含むドジョウを飼育し,その体表をかき取ったもの,などを使用した. この結果以下のような知見が得られた.まず,O-グリカナーゼの分布は非常に少なく,今回のスクリーニングでは明確に検出することは出来なかった.しかし,非還元末端のNeuAcおよびKDNを遊離は認められた.スクリーニングに用いた試料の半数以上から遊離NeuAcが検出されたのに対し,遊離KDNの検出は供試試料の1/4以下だった.このことから,KDNは環境微生物からの生体防御における重要な役割を果たしていると考えられた.
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