研究課題
フグにおけるフグ毒テトロドトキシン(TTX)の動態とそれに対する性成熟の影響解明に資するため、初年度は、人工交雑フグ(トラフグ×クサフグなど)を用いてTTX投与実験を行った。その結果、フグ体内に投与されたTTX は、血液を介してまず肝臓、次いで雄では皮、成熟が始まった雌では卵巣に移行・蓄積することがわかった。一方、TTX輸送の分子機構解明に資するため、トラフグを対象にTTX結合性タンパク質(PSTBP)の相同遺伝子を探索したところ、3つの候補遺伝子が見出され、そのうち2つはタンパク質として血漿中に存在することが明らかとなった。2年目は、成熟段階別個体の入手が困難なトラフグに代え、ツムギハゼを用いて性成熟に伴うTTX体内分布の変化を調査したところ、卵黄形成期から産卵期盛期にかけ、性成熟に伴い卵巣に移行・蓄積するTTXの割合が顕著に上昇することを見出した。一方、月齢の異なるトラフグを用いてTTX投与実験を行い、本種では肝臓の発達に伴い、それまで皮に移行・排泄されていたTTXの多くが肝臓に移行・蓄積するようになること、すなわち成熟のみならず個体の成長もTTXの体内動態に影響することを示した。最終年度は、3種のフグにつき、体格、部位別毒量、肝量指数、生殖腺体指数、および皮の組織構造を調べ、トラフグでは肝臓の発達、ヒガンフグ雌では生殖腺の発達ないし成熟、オキナワフグでは皮の発達、特に腺構造の分化が体内毒分布の差異をもたらす主要な要因であることを示唆するとともに、養殖トラフグに異なる用量でTTXを投与し、肝臓と皮ではTTXの取り込み・蓄積・排出様式が異なることを示した。一方、無毒フグ1種、有毒フグ3種につき、PSTBP相同遺伝子の存否を検討したところ、有毒3種から2ドメインタイプのものが得られ、それらの糖鎖結合部位の相違が毒蓄積能に関与するものと推察された。
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