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2011 年度 実施状況報告書

ポリフェノールによる麻痺性貝毒の分解機構

研究課題

研究課題/領域番号 23580284
研究機関北里大学

研究代表者

佐藤 繁  北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (20170748)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードポリフェノール / 没食子酸 / 麻痺性貝毒 / デカルバモイルサキシトキシン / プリン / 酸化分解
研究概要

デカルバモイルサキシトキシン(dcSTX)標準品を、Wong et al. (1971)の方法に従って塩基性条件下で過酸化水素水で加熱処理して得られる酸化分解物(ピリミジドプリン体)と、dcSTX標準品を中性リン酸緩衝液中で没食子酸プロピルを作用させて得られる反応生成物を、Cosmosil 5C18-AR2(2x150mm)と0.085%ヘプタフロロ酪酸/15%アセトニトリル(0.2mL/min)を用いる四重極LC-MS/MSで分析し比較した。dcSTXを過酸化水素で処理した場合、C9H11N6O2およびC9H13N6O3の2種の酸化分解物が生じることが想定される。実際に本研究では、dcSTXの過酸化水素処理により、LC-MS/MS上でRT3.2minおよび3.4minに、それぞれこれら2成分に対応するm/z235およびm/z253の2種の成分が確認された。前者はm/z163, 175, 189, 217、後者はm/z139, 151, 163, 175, 181, 193, 217, 235等のフラグメントイオンを与えた。dcSTXを没食子酸プロピルで処理した反応生成物もLC-MS/MS上でこれらと完全に一致する結果を与えた。これに対して中性リン酸緩衝液中でインキュベートした場合には、dcSTXはほとんど減少せず、このような成分の生成は確認できなかった。以上の結果から、没食子酸プロピルは中性水溶液中でdcSTXに対して強力な酸化剤として作用することを確認した。dcSTXを酸化分解する作用は没食子酸プロピルの他、没食子酸やピロガロール、茶カテキンにも同程度認められた。ケルセチン、ルチン、クロロゲン酸のdcSTX消去能は前3種のポリフェノールに比較して低かった。すなわち、多数のフェノール性水酸基を持つポリフェノールほど、毒を効率よく分解できることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度中に実施を予定してた研究項目につき、予定通りの成果が得られた。1)ポリフェノールの構造と活性の相関性の関係 ピロガロール、没食子酸プロピル、没食子酸、茶カテキンなど比較的多数のフェノール性水酸基を有するポリフェノールが、毒を効率よく消去することを明らかにした。これに対してケルセチンやルチンなど、フェノール性水酸基の一部がマスクされている成分の毒に対する効果は若干低いことを確認した。2)反応生成物の同定 デカルバモイルサキシトキシン(dcSTX)を没食子酸プロピルの中性水溶液中で処理することにより、dcSTXを既報の方法に従って過酸化水素処理して得られる分解物(ピリミジドプリン体)が得られることを確認した。すなわち、ポリフェノールが中性水溶液中で毒に対して酸化剤として作用することを明らかとした。

今後の研究の推進方策

引き続き、種々のポリフェノールについて毒の消去作用すなわち酸化分解能を調べる。これに加え、茶やワイン、ジュース類など種々の植物抽出液を用い、毒を効率よく消去する品目をスクリーニングする。抹茶やワインポリフェノールなど、これまでに効果の確認されているポリフェノール含有粉末を毒化貝のむき身ホモジネートと種々の比率で混合して加温し、毒の経時変化を調べる。赤ワインや茶などに毒化貝やフグの身を浸漬し加温することにより、肉に含まれるサキシトキシン群麻痺性貝毒が減少するか否かを検証する。

次年度の研究費の使用計画

毒成分およびポリフェノール等生体成分分析のためのHPLCカラム。および分析前処理用キット類、種々の分析用薬品類、ならびにポリフェノール標準品などの消耗品にかなりの予算を用いる予定である。これに加えて、学会での発表、試料収集等に必要な旅費、およびマウス試験、NMR分析等などの外注費、論文投稿料等への支弁を予定している。

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公開日: 2013-07-10  

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