研究課題/領域番号 |
23580286
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
張 成年 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, グループ長 (70360766)
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研究分担者 |
丹羽 健太郎 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 研究員 (20371875)
竹山 春子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60262234)
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キーワード | 難培養微生物 / 海産無脊椎動物 / エンリッチメント |
研究概要 |
横須賀市長井地先で採取したサザエ(Batillus cornutus)およびタツナミガイ(Dolabella auricularia)を用いた。採取時の腸内容物からゲノムDNAを抽出した(天然標本)。また、同時に採取したサザエとタツナミガイを濾過海水を供給した水槽内で個別飼育し、褐藻類のカジメ(Ecklonia cava)を30日間給餌した。飼育終了時に、各個体の腸内容物からゲノムDNAを抽出した(飼育標本)。加えて、飼育中の濾過海水、カジメ葉体表面及び飼育水槽壁面からもDNA標本を採取した。これらのDNA標本を鋳型として16S rRNA遺伝子を対象とした腸内細菌叢の多様性解析を行った。 サザエの天然標本ではすべてPsychrilyobacter spp.が優先種であったのに対し、飼育標本ではPsychrilyobacter spp.は減少し、代わりにVibrio spp.もしくは難培養性未同定株が優先種となった。また、サザエの飼育終了時における腸内細菌叢は個体間で類似していた。タツナミガイの天然標本ではVibrio spp.およびMycoplasma spp.が優先種であったのに対し、飼育標本ではVibrio spp.の割合が増加した個体やIlyobacter psychrophilusが優先種となった個体が見られ、どちらの場合もMycoplasma spp.は減少し、サザエと異なり腸内細菌叢は個体間で大きくばらつく傾向があった。飼育海水中、海藻表面、飼育槽壁からはサザエとタツナミガイの腸内で検出されたバクテリアは出現しなかった。このように、藻食性動物の腸内細菌叢には種特異的様相があること、特定の餌を給餌することによって腸内細菌叢を変化させることが可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に比較して対象動物種を2種に絞ったことによって、より詳細なメタゲノム解析を行うことができた。さらに動物種ごとに特異的な細菌叢があること、特定餌の給餌によって細菌叢に変化をもたらしうることが明らかになった点で、前年度の成果を発展させることができたと言える。一方で、動物種によっては変化の方向性が安定しないことも明らかになった点が課題のひとつであり、同じ実験を繰り返す必要がある。さらに、細菌叢の分析については主成分分析やヒートマップ分析といった多変量解析、統計解析の導入が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得た結果を確認するうえで、類似した給餌飼育試験を行う。主成分分析やヒートマップ分析といった多変量解析、統計解析を導入することによって、動物種ごとの細菌叢の特徴や種及び個体間の比較検討をビジュアル的に把握し易くする。また、海藻構成多糖を分解する酵素遺伝子をターゲットとし、抽出したメタゲノム中の酵素の多様性解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度と同様の飼育及び分析を行うことから類似レベルの研究費が必要である。学会発表のための旅費及び論文作成のための英文添削費も必要となる。
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