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2013 年度 実施状況報告書

ゲーム理論による農民参加型灌漑管理組織の持続可能性条件の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23580287
研究機関北海道大学

研究代表者

近藤 巧  北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40178413)

キーワード灌漑 / ネパール / 水利組織
研究概要

ネパールの農民管理型灌漑システムの調査を実施した。調査対象水利組合は、ネパール・シンドパルチョーク郡シカルVDCの農村のプチャール水路ジャルキネ水道利用組合である。この水利組合は、昨年まで調査を行ってきた、サク村のインフォーマルな灌漑管理活動と異なり、どちらかといえばフォーマルな水利組合がその担い手である。灌漑水供給に果たす水利組合の役割、受益者による費用負担の実態を明らかにした。この組合の水利施設は約30年前に現在の水利組合長ほか3名によって建設された。長さ約3kmの幹線水路を有する。組合長を含めた11名の有力農家がボード委員会を設立し、この水利組合の運営に携わっている。この組合では水利施設の維持管理のための労働供給と水利費の支払いが制度化されていた。水利組合が定めたルールの違反者にはペナルティが課せられる。水の配分方法も水資源が乏しい3~6月にはローテーションシステムが取り入れられていた。このような水配分の履行者は、村の農民から雇用された水路管理人である。このような組合長に代表される有力農民は、村の中でも比較的大きな権力を有し、一般農民をリードしてきた。彼らの存在は、灌漑システムの維持管理に関して一定の秩序を与えるものであり、灌漑システムへのただ乗りを防止する要因となっていた。このように本調査によって、組合長を中心とした有力農家のリーダーシップが水利組合の制度や活動内容に影響を与えていたことが明らかになった。灌漑システムのモデル化に際しては、村落のリーダーの説得や威嚇などの役割を組み込むことの重要性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今回の調査は灌漑システムの理論モデルを構築する際に前提となるフォーマルな灌漑システムの事例の蓄積に寄与する。サク村の灌漑システムと異なり、公平な水配分、水利費の徴収、維持管理のための共同作業、農民の灌漑活動に関する監視活動がフォーマルなルールとして組み込まれていた。こうした事例をもとにフォーマルな水利組合について経済学的に分析することが可能となった。

今後の研究の推進方策

この水利組合においては農家は比較的労働力に恵まれているために現在でも水路の維持管理のための共同作業が存続している。現在、灌漑水の利用状況は良好であるが、今後若年労働力の流出や下流部農民の乾季における灌漑水に対する需要が増加した場合にどのようにゲームのルールが変更されていくのか定点観測を続ける必要がある。また、インフォーマルな水利組織とフォーマルな水利組織についてそのメリット、デメリット等を経済学的に分析したい。

次年度の研究費の使用計画

25年度に灌漑組織の持続可能性条件を明らかにすることを目的に農村調査を実施した。その結果、灌漑組織の維持管理コストの受益者負担の原則が適用されていること、そして、このような制度の形成の背後には水利組合長のリーダーシップが多大な影響を与えていることが明らかになった。そのため、調査計画を変更し、組合長や有力農民の灌漑システムの維持管理や公共財の供給に及ぼす影響を明らかにすることとしたため、未使用額が生じた。
組合長や有力農民の灌漑システムの維持管理や公共財の供給に及ぼす影響の調査と検討のために研究経費を充当する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Smallholding rubber farming in Indonesia: Is it efficient?2014

    • 著者名/発表者名
      Mohammad Rondhi, Takumi KONDO
    • 雑誌名

      The Japanese Journal of Rural Economics

      巻: 16 ページ: 89-96

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ネパール農村における栽培作物品種の変容と現状 : サクーにおける稲・馬鈴薯の事例より2013

    • 著者名/発表者名
      内藤敦允、近藤巧
    • 雑誌名

      農経論叢

      巻: 68 ページ: 129-135

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公開日: 2015-05-28  

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