研究課題/領域番号 |
23580289
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東山 寛 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (60279502)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 新規参入支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、北海道農業を対象として、各地域において実際に取り組まれている新規参入支援の実態を分析し、今後の取り組みを充実・強化するための方策を検討することである。本研究が予め研究対象として設定していた浜中町・美深町におけるケース・スタディは、3年目にあたる昨年度(平成25年度)でひとまず終了することとし、本年度は3つの事例地域における経営・経済的分析に力点を置くこととした。第1に、浜中町においては新規参入者を含む30戸の収支データ(平成24年実績)に基づいて、経営の最終的な成果としての「土地純収益」を算定した。この30戸の抽出は、対象地域の全牧場の階層区分に基づいてサンプリングしたものであり、新規参入者はおおむね「経産牛頭数30~50頭」かつ「出荷乳量200~400トン」の階層に属している。この階層は7戸が該当するが、平均土地純収益はha当たり37,102円という結果を得た。これは30戸平均の同15,580円と比べると2.4倍の水準である。第2に、昨年度から調査対象として追加した平取町(園芸地帯)において、本年度(平成26年度)に独立就農を果たした新規参入者を対象に、その初期投資にかかわる状況を把握した。この事例はトマト専作経営であり、1,200坪のハウス規模で就農している。その初期投資額は事業費(自己資金分を含む)で約4,300万円であり、各種の条件を考慮すると、トータルの償還額はおよそ2,600万円と試算された。第3に、道東酪農・畑作地帯の津別町を対象地域に加えた。津別町では、新規参入支援に取り組む農協出資法人「だいち」がすでに4件の就農実績を生み出しているが、この法人の機能を拡充し、本年度(平成26年度)よりTMRセンターと酪農コントラクター事業への着手を開始した。この新たな酪農支援システムについて概況的な調査を実施し、採算性の検討に必要な枠組みを整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定点観測地点として予め設定した2地域(浜中町、美深町)におけるケース・スタディに区切りをつけ、調査対象地域を園芸地帯に拡充しながら、経営・経済的分析に踏み込むことができた。特に、酪農地帯である浜中町における分析は、対象経営のサンプリングから研究を設計することにひとまず成功し、新規参入者を中心とする階層の経営的特徴を把握することができた。また、酪農と並んで、北海道における新規参入の代表的な形態である園芸地帯についても、事例的な把握に留まるが、経営・経済的分析に踏み込むことができた。この分析の延長上に、新規参入者の「経営モデル」を策定することができると考えている。また、新規参入者の経営確立にとって、地域農業の支援システムは重要なファクターである。本年度(平成26年度)はそれにかかわる事例として津別町を加え、農協(出資法人)「直営」型の支援システムの構築段階から調査を実施することができた。新規参入者の経営・経済的分析に踏み込むことができたことが、本年度の大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、研究期間を1年延長し、次の3つのことに取り組むこととした。第1に、浜中町における酪農経営の経営・経済的分析が単年のものに留まっているため、もう1年分のデータ分析を加えることである。同様に階層別のサンプリングに基づいて実施する準備は整っている。第2に、平取町(園芸地帯)における就農者の初期投資については把握したが、「経営モデル」を策定するために必要な収入面のデータが得られていない。これを付け加えて、特に償還財源の調達とのかかわりを分析する必要がある。第3に、新たな支援システムを整えた津別町の事例でも、農協出資法人による支援事業の採算性の検討に必要なデータが得られていない。これは本年度(平成26年度)の稼働実績に基づいて分析するが、その準備は整っている。本研究は定点観測地点(浜中町・美深町)のケーススタディに、以上のような経営・経済的分析を付け加えて取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、研究期間を1年延長し、次の3つのことに取り組むこととした。第1に、浜中町における酪農経営の経営・経済的分析が単年のものに留まっているため、もう1年分のデータ分析を加えることである。第2に、平取町(園芸地帯)における就農者の初期投資を把握し、その償還計画を試算したが、これに経営実績に基づく収入データの分析を加えて「経営モデル」を策定する。第3に、新たな支援システムを整えた津別町の事例を加えたが、その事業ベースの採算性を初年度の実績から検討する。以上の経営・経済的分析に必要なデータを収集する計画であるが、その準備は整っている。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の3地域(浜中町、平取町、津別町)でのデータ収集を行うため、それぞれ1~2回程度の補足調査を実施する。必要経費はすべて(国内)調査旅費である。
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