研究実績の概要 |
2015年センサス(確定値)によれば、北海道の農家数(販売農家)は38,086戸となり、ついに4万戸割れとなった(総農家数は44,433戸、農業経営体の総数は40,714経営体)。販売農家の農業経営者(男子、総数36,399人)の年齢階層別分布を見ると、最も多いのは「60~64歳層」(6,801人)、次いで「55~59歳層」(5,536人)であり、北海道農業は大きな世代交替期を迎えている。今後の見通しは、①世代交替の進展とさらなる農家数の減少、②二世代経営における親世代のリタイア、③後継者の確保、といった動きが複雑にからみ合い、その様相も地域によって一様ではないが、これまでのように①を受け止めて残存農家が規模拡大を図り、後継者の就農を保証する経営基盤を整えるといった対応のみでは、地域農業を維持できないことは明らかである。こうした直近の実情も踏まえて、本研究では酪農地帯を主な対象として、新たな担い手の確保・育成方策としての「第三者継承」と「農協出資法人」を活用した新規参入支援に着目し、実態分析をおこなった。前者(第三者継承)については、北海道内における先進事例(美深町・R&Rおんねない)を、後者(農協出資法人)については、根釧酪農地帯の取り組みをマークしてきた。前者は、継承支援組織(R&Rおんねない)の設立(2003年)からすでに13年を経過し、これまでに4件(2017年継承予定のケースを含めれば5件)の就農実績を生み出している。比較的長期間にわたる観察が可能な事例であり、研究の主眼は道内他地域にも応用可能な第三者継承の仕組みを整理して、その有効性を確認することに置いた。後者については、農協出資法人が有する農地・牧場の「中間保有」機能を重視し、その役割を整理した。
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