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2012 年度 実施状況報告書

農業経営における戦略的人的資源管理に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23580292
研究機関東京大学

研究代表者

木南 章  東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00186305)

キーワード人的資源管理 / 経営戦略 / 農業法人
研究概要

農業法人の従業員を対象として、農業経営における人的資源管理施策が人的資源管理成果に与える影響とそのプロセスについて理論モデルを構築した。モデルを基に、従業員の属性や態度の変数を含めた共分散構造分析を実施することによって以下のことを明らかにした。
①農業法人従業員の「就業意識」に直接影響すると予想された要因のうち、最もその影響が大きかったのは「職務満足度」であり、「組織コミットメントが」それに次ぐ。②「職務満足度」を高める効果が大きい要因は「組織コミットメント」と「キャリアコミットメント」である。③「労働時間」は「職務満足度」「待遇満足度」「組織コミットメント」を通じて就業意識の低下をもたらす。④「給与金額」「賞与等」は、「就業意識」に対する直接効果はほとんど認められないが、「就業意識」に正の影響を与える「組織コミットメント」に対して正の効果を有する。⑤従業員属性の「就業意識」に対する直接の影響は強くはないが、相対的に「学歴」「農学歴」の影響が大きい。ただし、従業員属性と「就業意識」との関係は複雑である。「年齢」「性別」は「就業意識」に対する直接の影響は弱いものの、「就業意識」に強く影響する従業員態度変数に影響している。
以上の分析結果は、雇用就農者の就業意識の形成に至る複雑なプロセスの一部を明らかにしたものであるが、同時に、農業経営における効果的な人的資源管理施策を考えるうえで、雇用就農者の就業意識を規定する要因や要因間の関係を考慮することの重要性を示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

農業法人の経営者、従業員に対してアンケート調査結果を実施し、因果関係モデルを想定し、共分散構造分析を適用し、経営戦略、人的資源管理が、人的資源管理に関わるを経営成果に与える影響とそのプロセスを解明し、モデルの有効性についての検証を行った。研究成果の一部を日本農業経営学会において発表した。また、農業法人就業希望者の就業意識の特徴、農業法人における人材育成の方針や施策に関する実態調査が進められており、計画全体において概ね順調に進展していると判断される。

今後の研究の推進方策

HRM理論の農業経営学における理論展開について考察し、農業経営におけるHRM理論を構築する。さらに、経営環境とHRMの類型区分について検討し、地域の社会経済的特性とHRMとの関係について理論的検討を行う。実態調査分析においては、農業経営におけるHRM活動の実態と課題を明らかにするための調査分析を行う。
調査結果、収集資料の整理・分析を通じて、HRM活動に関して、内容・類型、経営成果に対する効果を、農業経営のプロフィールとともに関連付け、データベースを作成する。就業時のエントリーマネジメントだけではなく、就業前のインターンシップ、および就業後の人材育成について、経営戦略との関係を明らかにする。そして、HRM活動による農業経営の競争力と持続可能性確保のモデル化調査結果を基に、HRM活動によって農業経営の競争力と持続可能性を高める経営戦略のモデルを作成する。作成したモデルに対して、現地関係者の評価を仰ぎ、農業HRM活動による経営戦略モデルの理論化を行う。
調査結果・収集資料の取りまとめ・分析については、これまでの調査結果、収集資料を整理し、農業経営の立地する地域の特性、経営環境、経営組織、経営構造、経営戦略とともに、HRM活動のデータベースを作成する。上記データベースを基に、HRM活動と経営戦略との関係、および両者の関係性を踏まえた農業経営の競争力と持続可能性の規定要因を計量的に解明する。研究成果については、随時、日本農業経済学会等の関係学会において発表し、学会誌に論文投稿していく。

次年度の研究費の使用計画

農業経営におけるHRM理論の構築、実態調査分析、調査結果・収集資料の取りまとめ、および研究成果の発表については計画通り実施する。
農業経営(経営者および従業員)、関係機関、研究機関、農家組織、農企業、社会保険労務士等の専門家を対象とした実態調査を実施し、農業経営におけるHRM活動の実態と課題を明らかにするための調査分析を行うとともに、HRM施策とその効果に関して、就業前のインターンシップ、および就業後の人材育成活動にまで対象範囲を広げ、農業経営者、雇用就農者、雇用就農希望者を対象にしたアンケート調査分析を行う。
調査結果、収集資料の整理・分析を通じて、HRM活動に関して、内容・類型、経営成果に対する効果を、農業経営の経営構造と経営戦略とともに関連付け、データベースを作成するとともに、農業経営の経営戦略論を基礎とするHRMの構築を試みる。研究成果の発表を日本農業経営学会等の関係学会において発表し、学会誌に論文投稿する

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] 雇用就農者の就業意識の形成プロセスに関する分析2012

    • 著者名/発表者名
      木南章・木南莉莉
    • 雑誌名

      農業経営研究

      巻: 50 ページ: 58~63

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 食料サブ・クラスターのネットワーク構造の分析-新潟県「健康ビジネス連峰」を事例として-2012

    • 著者名/発表者名
      木南莉莉・古澤慎一・木南章
    • 雑誌名

      地域学研究

      巻: 41 ページ: 1055~1074

    • DOI

      10.2457/srs.41.1055

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Analysis on the Attitude of Employed Japanese Farmers from the Viewpoint of Human Resource Management2012

    • 著者名/発表者名
      Cao, W., Kiminami, L., Kiminami, A.
    • 雑誌名

      農業経済研究別冊:2012年度日本農業経済学会論文集

      巻: 別冊 ページ: 53~60

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 農業関連コミュニティ・ ビジネスの可能性に関する分析-新潟市における住民の意識調査を通じて-2012

    • 著者名/発表者名
      古澤慎一・木南莉莉・木南章
    • 雑誌名

      地域学研究

      巻: 42 ページ: 317~336

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparing theTechnical Efficiency of Rice Farms in Urban and Rural Areas: A Case Study from Nepal2012

    • 著者名/発表者名
      Piya Sujan., Kiminami, Akira., Yagi, Hironori
    • 雑誌名

      Trends in Agricultural Economics

      巻: 5 ページ: 48~60

    • DOI

      10.3923/tae.2012.48.60

    • 査読あり
  • [学会発表] Analysis on the Attitude of Employed Japanese Farmers from the Viewpoint of Human Resource Management

    • 著者名/発表者名
      Cao, W., Kiminami, L., Kiminami, A.
    • 学会等名
      日本農業経済学会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県)
  • [学会発表] Choice of Contract Farming and its Impact on Agricultural Income A Case of Vegetable Production in Bac Giang, Vietnam

    • 著者名/発表者名
      Dang Thi Kim Hoa, Akira Kiminami, Hironori Yagi, Tran Huu Cuong
    • 学会等名
      日本農業経済学会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県)
  • [学会発表] 農業法人就業希望者の農業キャリア志向に関わる意識構造の研究-2011年度新・農業人フェアアンケート調査結果を基に-

    • 著者名/発表者名
      永井慧・木南莉莉・木南章
    • 学会等名
      日本農業経営学会
    • 発表場所
      宮崎大学(宮崎県)
  • [学会発表] Analysis of Contract Choice in Raw Material Procurement of Agribusiness Firms: Case Study in the Northern Region of Vietnam

    • 著者名/発表者名
      Hoa Thi Kim Dang, Akira Kiminami, Hironori Yagi
    • 学会等名
      日本地域学会
    • 発表場所
      立正大学(東京都)

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公開日: 2014-07-24  

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