研究課題/領域番号 |
23580294
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
千年 篤 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10307233)
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研究分担者 |
野見山 敏雄 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20242240)
横山 岳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20210635)
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キーワード | 日本のシルク産業 / 産業の進化プロセス / 蚕糸絹業 / 養蚕業の盛衰 / 繭生産変数間の連動性 / 絹織物産地 |
研究概要 |
本研究の基盤であるデータベースの構築と個別事例調査を行った。データベースの構築については、前年度までに構築した長期データベースの追加・修正を行った。特に養蚕部門において繭生産数量(収繭量)、養蚕戸数、蚕種掃立卵量、桑園面積については全国統計に加え、愛媛県と山梨県の県統計を収集・整理した。個別事例調査では、絹織物/蚕種業に注目して、愛媛、奄美大島、富士吉田、十日町等を対象にした調査を行った。 実証分析では、①養蚕部門の長期データベースを適用した日本の養蚕業構造変化の定量的分析と、②富士吉田市・十日町の絹織物業に関する事例分析を中心に行った。 ①については、長期の日本の養蚕業の盛衰過程について、長期繭生産統計を効果的に活用し、繭生産変数間の連動性の程度とその変化を定量的に明らかにした。分析に当たり収繭量を4項に分解することで収繭量の変化に対する各項の貢献度を定量的に計測できる新アプローチを開発した。計測結果をもとにした分析から、戦前では繭増収において蚕の品種改良・普及や飼育管理・技術水準の向上が重要であったが、戦後では収繭量変化要因がより複雑化し、地域によって異なっていたことが見出された。 ②については、山梨県・富士吉田市と新潟県・十日町の絹織物生産主体の現在の対応と今後の意向等を明らかにし、その結果を踏まえ今後の産地活性化に資する方策の提示を行なった。蚕糸・絹業提携システム事業等を活用した消費者ニーズに対応したオリジナル製品(個別的創意工夫による個性のある多品目)の開発・促進が絹織物産地の継続には重要であることが示唆された。これは前年度までの事例調査から得られた知見と整合的である。 理論分析では、産業発展史や産業組織論分野等の文献調査を通じて進化経済論的アプローチを整理し、それを踏まえ、養蚕業・製糸業・絹業間の関係性が希薄であった歴史的事実の合理性について理論的解釈を行った。
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