研究課題/領域番号 |
23580297
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊藤 亮司 新潟大学, 自然科学系, 助教 (70334654)
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研究分担者 |
清野 誠喜 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90225095)
宮入 隆 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40422018)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ローカルスーパー / 産地形成機能 / 販売戦略 / 日本 |
研究概要 |
初年度にあたり対象ローカルスーパー各社の経営戦略、店頭販売戦略、仕入・品ぞろえ戦略、産地編成戦略および当該ローカルスーパーと契約関係を形成する園芸産地農家の経営構造、販売戦略ならびに農家組織の産地マーケティング戦略についての実態調査を重視した。 当初予定の秋田県T社、新潟県H社については、両社の全面協力により、新知見を含めた調査結果が得られた。従来、市場遠隔地でかつ稲単作地帯の両県では、園芸振興にあたって首都圏等の大ロット販売先開拓や広域市場流通に乗せる形でのマーケティングがメインとなってきたが、そのような販売戦略のなかでは他産地との競合や産品の取引先店頭でのレギュラー品扱いに止まる傾向が強かった。これら産地農業にとって地元ローカルスーパーは、一見、小ロットの販路であり販売戦略上重きが置かれることは少なかったが、一部で取り組まれる地元ローカルスーパーと積極的に結合して、地の利を活かした密な連携により取り組まれる販売は、収益性、生産性、商品力等の点で、大きな成果をもたらし、産地形成上の有利性、商品開発における相互作用、付加価値生産として現れる可能性が示唆された。特に一部スーパーで取り組まれる生産者インショップ販売を活かした店舗全体の差別化の動きは、流通業者と産地農業の連携の新たな形として、また新たな転作対応として注目される。これら新知見についての昨秋の学会報告および論文1報を発表した。また類似問題を扱う北大グループと春の学会で意見交換を行った。 同時に、スーパー調査で見えてきたのは、それら産地形成機能や店頭マーケティングと一体となった販売戦略の司令塔として実際に機能するのは、必ずしもローカル・スーパー側ではなく、両社を繋ぐコーディネータ役であり、その存在への依存も含めて、スーパー側での手法蓄積・機能保持が課題となっていることである。この点についての実証が翌年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定にしていたメインとなる調査対象への実態調査(秋田県および新潟県)については、秋田県T社、新潟県H社の全面協力により、新知見を含めた調査結果が得られた。研究目的の大枠であるローカルスーパーのマーチャンダイジング機能、すなわち「ローカルスーパーの強み」「地元農業との連携による差別化マーケティングの可能性」「地域農業への波及効果」についての解明を順調に進めることができている。また、核となるコーディネート機能の蓄積・保持がどこでなされているかについての実証が、今後の研究重点となることも見えてきた。ただし他地域との比較検討のために当初計画した高知県への調査は未了であり、次年度に行いたい。この点のみが1年目の積み残しといえる。
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今後の研究の推進方策 |
他地域のの比較検討については、西日本の周辺部を重視して四国(高知県)および九州(福岡県)を予定している。北大グループが調査地としている広島県等の情報も互いに交換しつつ実証研究を進めたい。 メインとなる秋田及び新潟での研究については、(1)対象企業2社との競争関係を確認する必要から域内他社についても一定の調査が必要になること、および(2)当該2社における産地との結合・差別化が具体的な販売成果にどのように結びついているかを明らかにするための消費者行動観察調査・店頭実験を行う。 東北の他地域については、特に太平洋側の各県については、震災の影響が否めない等調査の条件が悪く、また、復興を優先する立場の各社に迷惑をかけない配慮も必要なことからなるべく避けることとする。 最終的には、大手スーパーとの違いの析出やローカルスーパーの強固な地位が東アジアのなかで日本に特有であることの掘り下げた理解のために、韓国・台湾等での調査も計画する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費としては、実態調査を進める観点から旅費(国内外)をメインに計上する。調査データの蓄積に応じて、データベースの作成・整理も必要になってくることから一定の学生アルバイト謝金も計上する。それ以外に謝金としては、消費者調査の分を見積もる必要がある。物品として大きなものは必要ないが、必要な資料等の書籍、データ処理のための統計ソフトを計上する。
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