研究課題/領域番号 |
23580297
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊藤 亮司 新潟大学, 自然科学系, 助教 (70334654)
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研究分担者 |
清野 誠喜 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90225095)
宮入 隆 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40422018)
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キーワード | 青果物流通 / ローカルスーパー |
研究概要 |
1.全体像:既存の広域流通システム(農協共販・市場流通)の弱化あるいはそこに乗り切れない稲作単作地帯の後進園芸産地において、地元ローカル・スーパーと地元産地が連携しあうインショップ展開による地域での優位性確保に向けた取り組みについて実証的に明らかにするために継続的な調査を行った。具体的な調査地は、前年から継続している秋田県、新潟県およびそれとの比較対象としての福岡県・広島県である。 2.仕入・産地育成戦略:秋田・新潟においては、近年、ナショナル・チェーンの進出が顕著であり、上記はそれへの対抗として差別化を迫られる中での対応といえるが、同時に、地域農業・農協系統組織(専門農協等を含む広域合併による間接効果)の弱化のもとで、産地育成を迫られるスーパー側の論理ともいえる。本年度は、ナショナル・スーパーとの競合関係およびローカル・スーパーの具体的産地育成策についての調査に重点を置いた。結果として分かってきたことは、当初、スーパー側にあったコーディネート機能が、次第に産地の農家側に移り、そのことによりスーパー側の負担軽減とともに農家側の能力・調整機能向上が図られていることである。また、そのような展開の基礎には、農家側を束ねるリーダー的存在が必要であり、高度な調整機能を担うそれらリーダー農家とスーパー側の信頼関係があることも分かってきた。それはナショナル・スーパーには見られない関係といえる。これらの成果を今年度6月の日本農業市場学会で発表する予定である。 3.店頭販売・顧客インターフェイス改善:更に、それら取り組みによるローカル・スーパーの優位性確保が顧客の購買行動等の面からどのように実現しているかについての調査も開始した。具体的には顧客へのインターフェイス評価、ネットを介した口コミ効果の検証、アイカメラによる購買時の行動調査である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目であった昨年度は、3.11震災の影響が否定できず、特に秋田および東北他県での調査は想定より少し遅れ気味であった。そのことにより国内旅費を中心に予算が少し余り次年度に繰り越したが、今年度は当初の予定にほぼ合致する調査を行うことができ予算的にも計画通りの支出となった。ただし1年目に使い残した分がほぼ同額余ったままであり、それは最終年度の今年、研究成果の取りまとめ・総合化とともに追加調査として使用する(下記、他地域との比較に相当)予定である。 当初予定していた、主要研究対象地である秋田県および新潟県における調査は、順調に推移している。また、当初予想では、スーパー側の店舗担当者や本部バイヤーが主に担うと考えられた店舗での棚づくり・顧客への情報受発信を含めたMD機能(本研究ではローカル・スーパーによる産地育成と顧客インターフェイス改善を同時に実現・統合するための企業行動と定義)の実質を担うのが、生産者側のリーダー層になってきていることが分かってため、研究対象をそのよう機能を担う出荷農家組織の展開過程や機能についての実態調査にまで広げることができた点は、計画時点での予想以上の研究展開である。また、今年度に予定していた店頭販売・顧客インターフェイス改善についても調査を開始することができ、この点も順調な達成として挙げられる。 ただし、当初予定していた西日本との比較およびローカル・スーパーの優位性についての韓国等アジア地域との比較については、今後の課題となっており、最終年度の今年6月および12月の韓国調査および9月の高知県調査を準備しているところである。 よって全体としてはおおむね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、「最終年には過去2カ年の研究成果を検討するとともに補足調査を実施し、ローカル・スーパーのMD機能と農業生産者・産地のマーケティング戦略の結合を整理し、我が国のローカル・スーパーを核とした青果物フードシステムの編成過程を総合的に提示する」としていた。 基本的には、この流れにそって最終年度の研究とりまとめを行う。ただし上記のごとく、MD機能の核がむしろ農家サイドに移ってきている現状に合わせるならば、研究対象も産地側農家の実態分析にシフトさせることが必要となる。そのため追加調査は、各地域の農家組織の調査にも及ぶことになる。また青果物フードシステム全体の編成というよりは、より具体的に地元ローカル・スーパーと地元産地が連携しあうインショップ展開による地域での優位性確保戦略についての可能性と課題を明らかにすることを最終的な落とし所としたい。 研究体制としては、研究協力者である宮入隆氏が主要研究対象地である秋田から北海道へ異動したため、調査にかかる旅費が当初計画よりも多くなることが予想される。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.そのため研究分担者への旅費を多めに配分する。 2.また、やり残している韓国および西日本への旅費を計上する。 3.最終年度の取りまとめに向け、関連学会等の開催を利用して研究メンバー同士の打ち合わせを行うための旅費を計上する。 4.物品としては多くを必要としないが、成果発表等のため消耗品代(インクや紙)が多くなることを想定してそれらを計上する。 5.研究成果の発表、論文投稿などについても多めに計上する。
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