研究課題
本研究の目的は、農村を巡る主要主体が従う誘因体系を踏まえた上で、農村における「制度」と「生物多様性保全」の関係を理論的に解明するとともに、最新の計量経済学的手法を用いた実証分析により、生物多様性保全に資する制度の特徴を明らかにすることである。生物多様性は、その概念の社会的なアピール力にもかかわらず、学術的にはいまだ捕えがたく、認識論的には常に暫定的なものであることは当該分野の研究者にはあまねく理解されているところである。この把握が容易でない対象に対して、相応の妥当性を持ちながらかつ操作可能な概念に注目し、実証分析を行った。すなわち、主要な生物多様性保全制度に関する文献調査およびヒアリング調査により明らかにされた生物多様性保全の重要な担い手である農家や農産物の消費者や農業に対する資金提供者が従う誘因と利得構造の下で、実態調査で得られたデータに基づき、生物多様性保全の現状を合理的な均衡状態として説明、さらに比較分析を通じて、生物多様性保全を効果的に行いうる経済環境を特定した。また、制度効果の実証分析においては、数度の制度改変を経ている中山間地域直接支払制度を事例に、理論研究の成果をもとに、マッチング推定量などを使って、その耕作放棄地防止などの生態系保全に寄与する効果を適切に定式化し、これまで得られることのなかった政策効果に関するいくつかの興味深い知見を得た。そして、以上の方法で得られた結果を論文の形で取りまとめ、研究会などを通じてその成果を社会に還元した。
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Discussion Paper, Graduate School of Economics, Kobe University
巻: No.1417 ページ: 全45頁