本研究の主要な分析目的は、アジアの先進国である日本と韓国に関し、農業生産性の計量経済学的分析を通じて、農業生産性の向上と食料自給率の向上との関連性を考察することにある。平成26年度は、以下の研究活動を実施した。 1.農業生産性に関する分析作業:平成26年度に、日本の稲作生産性では1996年以降の期間を対象として生産性の計測を行ったほか、稲作生産性の地域別貢献度分析や経済収束分析を行った。韓国の白菜でも生産性の分析作業を進めたが、分析結果の論文化や学会発表までには至らなかった。 2.食料自給率に関する分析作業:日本の農畜産物12品目に対する食料自給率の過去推移に関し、食料自給率向上と単収(土地生産性)などとの関連性を解明するため、要因分解分析を行った。さらに、同じ12品目に対する食料自給率の2011年から2060年までの将来予測についても同様な要因分解分析を試みた。 3.学会報告:平成26年6月にカナダ(オタワ)で開催された北米生産性学会において、1996年以降の日本稲作を分析対象として、稲作生産性の地域別貢献度分析を発表した。同年7月にオーストラリア(ブリスベーン)で開催されたアジア太平洋生産性学会において、1996年以降の日本稲作生産性の経済収束分析を発表した。同年10月には、地域農林経済学会において、日本の食料自給率の過去推移を要因分解した報告を行った。また、平成27年3月には日本農業経済学会シンポジウムにおいて韓国の経済成長と農業発展に関する招待講演を行ったほか、同学会で日本の食料自給率の将来予測を要因分解したポスター報告も行った。 4.研究成果の意義:上記研究成果の意義は、第一に1996年以降の期間でも日本の稲作生産性が停滞していたこと、第二に日本の食料自給率向上には農業の生産要因よりも消費の需要要因が大きく寄与していることを解明したことである。
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