研究課題/領域番号 |
23580313
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
近藤 和美 国際基督教大学, 教養学部, 客員教授 (40569852)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ローカルフードシステム / 持続可能な農業 / 農業の多面的機能 / 都市農業 / 食育 / 地域発展 / コミュニティ形成 / 日米比較研究 |
研究概要 |
本研究は日米のローカルフードシステムの比較研究をテーマとしている。平成23年度の研究は当初の計画にあるとおりアメリカで現地調査をおこない、現在その時収集したデータをもとに論文の執筆中である。その結果、アメリカのローカルフードシステムは予想をはるかに超え急激に展開している事実が突きとめられた。このことはまさに当研究の学問としての重要性と、その事実を日本社会に伝え、農と食のあり方を考える材料を提供できる社会貢献の可能性も増したと言える。 具体的に明らかになったこととして、ローカルフードシステム推進の担い手として農業者、大学などの研究者、専門家、社会福祉や環境関連のNGOや活動家、小・中・高校などの教育組織、行政担当者などが挙げられる。1990年代よりこれらのアクターたちがネットワークを拡げ、一般市民を巻き込んで普及運動が進められている。最近では地元のビジネスの中にもローカルフードの普及に積極的に取り込む事業者もあらわれている。また、事例としているシアトルでは、市、および地域レベル双方の行政単位でローカルフードの普及とそのための法制度の整備に取り組む動きが出てきており、その展開を進めるプロセスにおいてアクター間の連携がさらに強化される現象が認められる。そしてネットワークの拡大は結果として新たなビジネスの発現や社会福祉事業への展開も誘発し、普及運動はますます活発化している。すなわちローカルフードシステムが、農業の領域、地域経済の領域、市民社会の領域、教育の領域とも連携しコミュニティ形成と連動しながら有機的に運動が前進していることが明らかになった。また調査を進めるうえでカリフォルニアなど他地域の事例についての状況も明らかになった。これら新規の事例は、一地域のコンテキストを超えた推進要因と課題を見極め、今後より精緻な調査結果を追及する手掛かりとなる重要な知見を提供すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年4月の研究開始時より既存文献・データの収集をおこない、同年8月には当初予定したとおり、米国で現地調査をおこなった。その後、9月にはそれまでの研究成果をまとめたものを国内の学会で発表し、他の研究者より多くの関心を示され、また参考となる助言を得ることもできた。また、英文でも論文ドラフトを執筆し、その発表を平成24年4月に行われた国際学会でおこなった。現在は英文学術誌への投稿に向けて、先に発表した論文の加筆・修正中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、アメリカにおいて農業の体験学習事業およびその関係者へのインタビューを実施、前回調査のフォローアップと同時に事例の数を増やして調査をおこなう。アメリカの比較となる日本の事例においても同様のインタビュー調査を実施し、地域のローカルフードのアクターがネットワークを構築し、連携する過程を比較分析する。平成25年度は比較となる日本のローカルフードシステムについての調査をおこなう。日本の調査においては原子力発電所の事故による放射能の土壌汚染の農業への影響は無視できず、その状況下でローカルフードがどのように展開していくかの検証も含める必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度はアメリカにおいてさらに調査をおこなう。また、24年と25年度にかけ日本において調査を実施する。なお、23年度の未使用分(約5万円)は主に学術誌への校閲・投稿費用として予定していたものなので、今後その目的に使用する。
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