本研究は日米のローカルフードシステムの比較研究をテーマとしている。平成25年度はこれまで収集したデータの分析・執筆をおこなった。日本の事例については有機提携をおこなっている農業者および消費者たちのこれまでの取り組みについてまとめ論文にした。消費者の提携グループについては社会状況の変化にともない会員が減少している中で、福島原発事故の放射能の影響により会員のさらなる減少、放射能に汚染された作物の回避と農業者の支援をどのように両立させるかが大きな課題となっていることがわかった。一方提携農業者たちは、安心・安全な作物を提携先に届けるべく自ら放射能検査体制をいち早く開拓していた。その行動を支えていたのが長年同業者たちと培ってきた有機農業の理念あり、理想とする農業者像である。それらのことから原発事故という緊急事態は奇しくも、有機農業運動やローカルフードシステムの推進にあたり理念的側面の重要性を確認できる事態となった。 アメリカの事例についてはローカルフードシステムのアクターが連携し農業の領域を超えて活動領域が拡大することに随伴して起こるローカルフードシステムの制度化について事例をまとめているところである。 本研究は本年度で終了することになるが、TPPなどにより脅威にさらされている日本の農業と食の環境を保全するためのひとつの有効な道筋を示すことができたので、今後も継続して研究をおこなっていくつもりである。
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