研究課題/領域番号 |
23580315
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
永松 美希 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (60202230)
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キーワード | アニマルウェルフェア / 家畜福祉 / 食の安全安心 / マンガリッア豚 / OIE(国際獣疫事務局) / イギリス / 食育 / ハンガリー |
研究概要 |
23年度より継続して資料収集を行ってきた。 2012年8月から9月にかけて、ハンガリー・イギリスでのアニマルウェルフェア畜産物の開発状況の海外実態調査を実施した。 ハンガリーでは「食べる国宝』として有名な国宝に指定されているマンガリッア豚が飼育されている。マンガリッツァ豚はもともと寒さに強いハンガリー在来の豚であったが、飼育頭数が減少の一途を辿り、ハンガリー国内での生産がほとんどなく、生ハムで有名なスペインにおいて品質の良い生ハム原料豚として飼育されていた。そこで現在のマンガリッア豚生産組合会長が、なんとかスペインではなくハンガリーでの飼育を回復させたいと尽力し、アニマルウェルフェアを前面に押し出すことはないものの、アニマルウェルフェアに配慮して飼育し、品質の良いブランド豚として、流通させることに成功した。大半は、その精肉を加工したハムソーセージなどがEU域内に高級食材として輸出されており、日本にも一部輸出販売されている。 10月には第6回東京都食育フェアにて来場した東京都民に対してアニマルウェルフェアに関する意識調査を実施した。約200名の市民から回答を得たが、その大半はアニマルウェルフェアについての知識に乏しく、今後の普及活動が必要であることが明らかとなった。同時にこのようなアンケートによってアニマルウェルフェアに対する啓発活動も可能であることも示唆された。 11月にはOIE(国際獣疫事務局)のアニマルウェルフェア国際会議に出席した。この会議は2年に一回開催されており、現在、OIEにて家畜の畜種別アニマルウェルフェアガイドラインが策定されつつある。また獣医学教育の中でのアニマルウェルフェアの重要性についても議論され、今後世界の畜産はアニマルウェルフェアを無視して進めることはできないことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハンガリー・イギリスにおける海外調査を実施できた。具体的には、生産者調査、流通の現状等についてヒアリングができた。計画当初は情報入手できなかった旧社会主義国のアニマルウェルフェア畜産物フードチェーンの開発状況まで調査することができた。世界のアニマルウェルフェア先進国であるイギリスのフードチェーンの最新状況については継続調査を実施した。特にケージ養鶏に関してはEUでの2012年ケージ養鶏禁止に伴い放牧養鶏卵が普及していることが確認できた。 世界的な傾向としてアニマルウェルフェア畜産物が以前にも増して一層浸透してきていることが確認できた。 一方日本の状況であるが消費者調査を中心に調査研究を組み立てた。毎年実施されている秋の東京都食育フェアにて消費者アンケートを実施した。このアンケートは今回で3回目の実施であるが、初回実施した場所が東京農大であったときと比較して、消費者のアニマルウェルフェアへの認知度が低く、依然日本においては、アニマルウェルフェアにたする関心はそれほど強いとは言えず、こちらの方が日本の現在の状況に近いことが確認できた。 11月にはマレーシアで開催されたOIEのアニマルウェルフェア国際会議に出席した。マレーシアでの会議はパリ、エジプトに次ぐ第3回目のアニマルウェルフェア国際会議である。この会議が初めてアジアで開催されたことは、畜産物の輸出国であるアジアもアニマルウェルフェアに対応して行かなければならないことを十分意識しており、生産現場でも既に対応しつつあることが理解できた。また、OIEにおいても重要な位置づけがされていることが理解され、研究の目的がある程度達成されていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、アニマルウェルフェア先進国であるヨーロッパ調査を継続する。この調査に関しては今年度は国として教育ファーム活動に力を入れるフランスについて調査を実施し、EU域内での比較分析を実施する。 消費者調査についてもこれまでの結果と比較するため継続して行う。 アメリカについても情報資料収集につとめ分析を行う。 このような調査結果を日本国内においてアニマルウェルフェアについてどのように普及啓発活動にリンクさせていくかも重要である。 今年度は研究のまとめの年度となるため、報告書執筆のための時間も確保しなければならない。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外調査①食育活動が盛んなフランスを中心としたEU調査する。②アジア圏でも予算的に可能であれば実施する。 文献翻訳に関しては英語圏以外の国の資料について実施する。 消費者調査については、東京都食育フェアが継続されるようであれば、引き続き実施する。これについてはアルバイト雇用を行い賃金を支払う。 またさらに広範な消費者調査のため、Web調査についても実施したい。 最終的に3年間の研究成果について報告書を作成する。
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