平成25年度の成果:研究結果を学術論文へ投稿し採択された.農業関係雑誌等に投稿した.また,北陸の40ha台の経営における生産費などを把握しイタリアと比較した. 研究機関全体を通じた成果:平均的規模の稲作経営に対して作業実態調査を行い,生産費について日本の経営と比較し,玄米重1kgあたりの費用合計が60円/kg台(1EUR=130円として)と日本の平均経営に対して約1/4,点播直播を用い生産費低下を進めたモデルに対して約1/2であることを示した.具体的構成要素について,イタリアでは1kgの種子が100円以下と特に低い.農業機械費については,ブロードキャスタなど,畑作用の機械の汎用利用も生産費低下に貢献している.また,大規模化によるメリットがある.労働費については,雇用労賃単価が日本より実質高い一方で,一筆面積の拡大等によって労働時間は4時間以下と,日本より大幅に省力化されている.一筆面積の拡大にはレーザーレヴェラーが貢献している.代かき作業をレーザーレヴェラーによる均平へと代替することは,圃場の大区画化による日本の水稲生産費低下へのポイントと考えられる.また,イタリアの直播稲作は表面播種において出芽苗立ちが安定しており,その理由の一つは苗立ち時期の水管理が解りやすく明確になっていることにあることを示した.イタリアの稲作では収穫時にほとんど倒伏していないことが第二の特徴である.その理由は「コシヒカリ」等より高い耐倒伏性,個体密度の増加に応じて稈が短くなる傾向という品種特性を持っているためであり,それを高密度播種が引き出していることを解明した. 研究の意義・重要性:農業経済学において初めてイタリア稲作の経営構造と技術構造を解明した.日本の直播稲作研究においては,イタリアの品種が高い耐倒伏性を有していること,それを高密度播種が引き出すという指摘は,有用な知見を提供した.
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