まず、米国の食肉産業に関して、前年度までの基礎データの分析を踏まえて、25年度は畜産(特に養豚)業が垂直的統合から水平的分業体制へ転換したことを実証した。近年、北米において畜産業の規模が拡大し、畜産技術が著しく進歩している。このような状況下において畜産、特に養豚のビジネスモデルが大転換し、垂直的統合から水平的分業体制に変化しつつある。これは、製造業(特に電機・電子産業)と共通する現象であり、畜産ではこれまでにない新しい現象である。いわゆる「農業の工業化」の最先端の事例ともいえる。したがって、学問的立場から判断して、本研究の成果は学問的意義が大きい。 次に、ブラジルの食肉産業に関しては、23年度に世界最大の食肉企業JBS社を訪問したのに続き、25年度には世界最大の鶏肉企業であるブラジルフーズ社、ブラジル鶏肉輸出業者協会に加え、輸送インフラに関わる団体等を訪問して、ブラジル国内の鶏肉生産販売の寡占化の進展と、その一方におけるグローバルな輸出拡大に不可欠ながらも長年足かせとなっている輸送インフラ整備の停滞という食肉生産流通の課題が明らかになった。また、ブラジルの大手食肉企業が米国・豪州の大手食肉企業を買収し、そこから日本へ輸出している構図が強まっており、単に貿易統計のみでは解明できない事実が明らかになったのは大きな成果である。 最後に、ブラジルを対象として、食肉産業を支える飼料(大豆・トウモロコシ)生産に関して分析した。この結果、南部では土地を巡って大豆とトウモロコシが代替関係にあるが、最大産地の中西部では大豆生産が優先され、裏作にトウモロコシが作付けされる体系が確立しており、トウモロコシ生産の半数は大豆とトウモロコシの相対価格に影響されないことが明らかになった。これは当研究で始めて明らかになった事実である。
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