研究課題/領域番号 |
23580327
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
向後 雄二 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30414452)
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研究分担者 |
斎藤 広隆 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70447514)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地盤工学 / 防災 / 不飽和土 / 圧密解析 / 斜面安全度 |
研究概要 |
平成23年度はその当初計画において,次の4項目を挙げた。(1)ヒステリシスを考慮した不飽和弾塑性モデルの定式化,(2)ヒステリシスを考慮した水分特性曲線のモデル化,(3)検証のための降雨斜面模型実験の実施,および(4)上記ヒステリシスモデルの検証のための要素試験の実施,である。(1)については,Jump移動硬化則を用いた拡張下負荷面モデルに基づくモデルを提案し,それを飽和・不飽和圧密解析の有限要素コードであるGEOCUPに組み込んだ。また,飽和粘土の体積変化挙動について,シミュレーションを行い,モデルの基本性能を確かめた。(2)については,境界面モデルに基づくモデルを提案し,その定式化を行った。既往のデータを用いてシミュレーションを行い,そのモデルの基本性能を検証した。その結果モデルはよくヒステリシスを表すことができた。(3)については,1Gレベルでの高さ92cmで斜面勾配45度の模型斜面について,降雨による斜面崩壊実験を行った。斜面は,自然斜面でよく見られる表層に透水性の高い緩い砂質層とその下部の基盤からなる斜面を想定した。降雨強度(25,50,100 mm/hr)と表層砂層の密度(相対密度0,25,50%)をそれぞれ三つずつ変えて実験を行った。今年度は,時間の関係で全てのケースを完了することはできなかった。今年度の結果から,実施された全てのケースで破壊が生じ,その破壊プロセスは降雨強度に依存し,25mm/hrでは,全体に渡る表層破壊が生じた。一方,50,100 mm/hrの実験では,斜面法先で崩壊が生じた後,崩壊は上部へと進む進行性破壊を示した。(4)については,シルト質土を用いて,繰り返し試験を実施した。試験は,不飽和土の体積変化挙動を調べるための等方圧縮試験とせん断による繰り返しをみる三軸圧縮試験からなる。次年度以降これらの実験結果についてシミュレーションを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度は上述した4つの研究項目を行った。全ての項目について,大まかにその達成度を総括すれば,当初の計画以上に達成できた。以下にそれぞれ項目毎に詳述する。(1)については,予定した内容以上に達成できた。その内容は,(1)Jump移動硬化則を用いた拡張下負荷面モデルに基づくモデルを提案し,それを飽和・不飽和圧密解析の有限要素コードであるGEOCUPに組み込むこと,および(2)飽和粘土の等方圧密試験のシミュレーションを行い,モデルの基本性能を確かめた。その結果,モデルはヒステリシス特性と,繰り返しによる塑性体積ひずみの累積をよく表現できた。(2)については,予定した内容をほぼ達成できた。その内容は,(1)境界面モデルに基づくモデルを提案し,その定式化を行った。(2)既往のデータを用いてシミュレーションを行い,そのモデルの基本性能を検証した。その結果モデルはよくヒステリシスを表すことができた。(3)については,予定した内容以上に達成できた。その内容は,1Gレベルでの模型斜面について,降雨による斜面崩壊実験を行った。斜面は,自然斜面でよく見られる表層に透水性の高い緩い砂質層とその下部の基盤からなる斜面を想定した。降雨強度(25,50,100 mm/hr)と表層砂層の密度(相対密度0,25,50%)をそれぞれ三つずつ変えた全9ケースの実験を行う。今年度は,全9ケースの内,ほぼ半分のケースを行うこととして計画したが,7ケースを実行することができた。(4)についても予定通りに実行できた。シルト質土を用いて,繰り返し試験を実施した。試験は,不飽和土の体積変化挙動を調べるための等方圧縮試験とせん断による繰り返しをみる三軸圧縮試験からなる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は,当初の研究計画に即した研究を実施する。すなわち,(1)ヒステリシスを考慮した弾塑性および水分特性モデルを飽和・不飽和圧密解析法に組み込み,要素試験レベルでの解析を可能にする,(2)ヒステリシスモデル検証のための要素試験を23年度に引き続いて実施する,(3)降雨斜面模型実験を23年度に引き続いて実施する,(4)斜面模型実験のシミュレーションを行う,(5)解析プログラムの修正等を行い,斜面崩壊解析システムを構築する。特に上記(3)には,模型の作製等で多くの労力が必要であり,そのための費用を特に手当てする。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究計画で述べたように,上記(3)の降雨模型実験を行うための人件費と役務費を計上する。また,これまでの研究成果を国内での学会および国際会議で発表するための経費を計上する。以上が主な費用である。
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