研究課題/領域番号 |
23580327
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
向後 雄二 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30414452)
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研究分担者 |
斎藤 広隆 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70447514)
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キーワード | 地盤工学 / 防災 / 不飽和土 / 圧密解析 / 斜面安全度 |
研究概要 |
平成24年度はその当初計画において,次の4項目を挙げた。①ヒステリシスを考慮したモデルの飽和・不飽和圧密解析法への導入,②ヒステリシスを考慮したモデル検証のための要素試験の実施,③検証のための降雨斜面模型実験の実施,および④モデル実験をシミュレーションする,である.①については,前年までに定式化されたJump移動硬化則を用いた拡張下負荷面モデルに基づくモデルを,飽和・不飽和圧密解析の有限要素コードであるGEOCUPに組み込んだ.また,不飽和土についてシミュレーションを行い,モデルの基本性能を確かめた.②については,DLクレーとよばれるシルトに対して,不飽和状態で繰り返し試験を実施した.③については,1Gレベルでの高さ92cmで斜面勾配45度の模型斜面について,降雨による斜面崩壊実験を行った.斜面は,自然斜面でよく見られる表層に透水性の高い緩い砂質層とその下部の基盤からなる斜面を想定した。降雨強度(25,50,100 mm/hr)と表層砂層の密度(相対密度0,25,50%)をそれぞれ三つずつ変えて実験を行った.これらすべてのケースでの実験が終了し,崩壊メカニズムについて実験結果から考察した.実験の結果,間隙水圧は,どのケースにおいても斜面の法先から負圧が解消され,徐々に斜面上部に飽和が進行した。崩壊形態は全体表層崩壊と進行性破壊に分類され,降雨強度が小さいほどおよび密度が大きいほど進行性破壊が生じた.④については,いくつかのケースについてシミュレーションを実施した.その評価については次年度行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は上述した4つの研究項目を行った.全ての項目について,その達成度を総括すれば,当初の計画をほぼ達成できた.以下にそれぞれ項目毎に詳述する.①については,予定した内容を達成できた.その内容は,(1) Jump移動硬化則を用いた拡張下負荷面モデルに基づくモデルを飽和・不飽和圧密解析の有限要素コードであるGEOCUPに組み込み,そして(2) 不飽和土の繰り返しせん断試験のシミュレーションを行い,モデルの基本性能を把握する,ことである.その結果,モデルはヒステリシス特性と,繰り返しによる塑性ひずみの累積をよく表現できた.体積ひずみについてはその繰り返し特性を十分に表現できなかった.さらなる検討が必要である.②については,予定した内容をほぼ達成できた.その内容は,DLクレーに対して,三軸および等方応力状態で繰り返し載荷試験を行った.③については,予定した内容を達成できた.その内容は,1Gレベルでの模型斜面について,降雨による斜面崩壊実験を行った.斜面は,自然斜面でよく見られる表層に透水性の高い緩い砂質層とその下部の基盤からなる斜面を想定した.降雨強度(25,50,100 mm/hr)と表層砂層の密度(相対密度0,25,50%)をそれぞれ三つずつ変えた全9ケースの実験を行った.現在そのモデル実験の考察を行っている.今後論文にまとめることが必要である.④については,シミュレーションについては,一部実行したが,現在実行中である.
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今後の研究の推進方策 |
25年度は,最終年度であり,24年度の継続課題とまとめに取り組む.すなわち,斜面安全度指標の構築を目指した研究および研究全体のとりまとめを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は最終年度であるから,解析に注力する.実験については当初予定したものについては完了した.したがって,これまでの研究成果を国内での学会および国際会議で発表するための経費および成果のとりまとめの経費を計上する.
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