研究課題/領域番号 |
23580330
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 公人 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (30293921)
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研究分担者 |
濱 武英 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30512008)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 流域水管理 / 水田 / 森林 / 住宅地 / 下水 / 水質管理 |
研究概要 |
流域末端での水質保全のためには,流域内での物質輸送過程を把握することが不可欠である.本研究では,流域内の各土地利用(山地,水田,畑(転作田),市街地)からの降雨時・無降雨時の流出水および流域末端の水量と水質を詳細に測定することによって,各土地利用が流域末端の水質形成に及ぼす影響をより正しく評価することを目的としている.こうした知見は,流域末端の総合的な水質保全のための各土地利用の水質管理のあり方に有用な知見を与えるものと考えられる. 平成23年度は観測地点の設置と水量・水質の測定の開始が大きな目的であった.当初予定してた家棟川流域は踏査の結果,河川への流入地点がほとんどみられないことから,隣接する日野川流域を対象流域に変更した.日野川上流部に位置する蔵王ダム直下,下流部の桐原橋地点,水田地区,転作田地区,森林流域,住宅地,集落排水処理施設(2箇所)に必要に応じて流量観測機器を設置し,採水地点を設定した.基本的に週一回の頻度で採水を行うとともに,降雨時の集中的な採水を自動採水器によって行った.分析項目は,窒素,リン,TOCをはじめ,各種イオンである. 住宅地の晴天時の観測結果から,各戸に設置された合併浄化槽からの季節的な流出負荷特性を明らかにするとともに,降雨時の結果から,路面や屋根からの負荷量と降雨量の関係を導いた.また,集落排水処理施設からの流出負荷特性も整理した.水田や転作田からの流出負荷特性については未整理な点があるが,データは順調に蓄積されている.森林からの流出水水質の特性については,とく降雨時について検討を行い.降雨に伴う流出量の増加に伴って濃度が上昇する成分(たとえば,硝酸態窒素)と低下する成分(たとえば,ナトリウムイオン)を明らかにするとともに,これらに及ぼす森林土壌の影響を評価した.以上のように,各土地利用からの流出水水質,負荷特性が明らかになりつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観測体制の整備が完了し,データが順調に蓄積され,徐々にデータの整理が進みつつある点で,おおむね順調に進展していると判断した. 当初予定していたストロンチウム同位体の測定開始ができなかった点は来年度に解消する予定であるが,窒素,リン,TOC,各種イオンの測定は順調に行っている.
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき,水文観測と水質分析を継続するとともに,(1)各土地利用の流出水と流域末端の水,降雨のイオンバランスの違いを明らかにする,(2)水質項目ごとについて,各土地利用の流出水の寄与の特徴を明らかにする,(3)無降雨時での灌漑期と非灌漑期の比較を行う,(4)降雨時での灌漑期と非灌漑期の比較を行う,(5)降雨パターンの違いによる流出特性の違いを明らかにする,といった観点からデータ解析を行う. とくに,農地(とくに水田)からの流出水の水質が流域末端部の水質形成に及ぼす影響を定量化し,農地での流出負荷削減対策がどの程度,流域末端の水質改善に寄与するのかを明らかにする. さらに,福島県における放射性セシウムの問題においても,森林からの流出水,水田での用排水,河川水といった,流域レベルでの物質管理という視点が不可欠である.この問題にも同様の観点から観測を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
主要な使途は,水質分析に必要な薬品,ガラス器具などの消耗品である.その他,現地調査および研究発表のための旅費,学術論文への投稿にかかる費用としての使用を予定している. なお,本年度,非灌漑期においては灌漑期に比べて水質濃度変化が大きくないため,採水頻度を週1回から週2回に変更した.そのために,水質分析に必要な消耗品の必要額が減少したことによって,執行残額が発生した.この次年度使用額については,水質濃度が大きく変化する次年度の灌漑期初期における頻度の高い採水および分析における消耗品や調査旅費として使用する予定である.
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