研究課題/領域番号 |
23580330
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 公人 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30293921)
|
研究分担者 |
濱 武英 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30512008)
|
キーワード | 流域水管理 / 水田 / 森林 / 住宅地 / 下水 / 水質管理 |
研究概要 |
流域末端での水質保全のためには,流域内での物質輸送過程を把握することが不可欠である.本研究では,流域内の各土地利用(山地,水田,畑(転作田),市街地)からの降雨時・無降雨時の流出水および流域末端の水量と水質を詳細に測定することによって,各土地利用が流域末端の水質形成に及ぼす影響をより正しく評価することを目的としている.こうした知見は,流域末端の総合的な水質保全のための各土地利用の水質管理のあり方に有用な知見を与えるものと考えられる. 平成24年度は,平成23年度に開始した現地観測と同様の観測を引き続いて行った.主な現地観測は日野川上流部に位置するダム直下,下流部地点,水田地区,転作田地区,森林流域,住宅地,集落排水処理施設である.分析項目は,窒素,リン,TOCをはじめ,各種イオンである.また,流出水量の経時測定を行った.各地点からの濃度と流量から負荷量を計算し,濃度と流域レベルでの負荷量の特性について整理を行った.その結果,(1)濃度としては,必ずしも水田・転作田の排水で高いわけではない.SS,TOC,Caは水田・転作田で高い.NO3は森林よりも低い.(2)負荷量としては,水田・転作田の割合が高い項目が多い.転作田からの負荷量は無視できない.(3)流域としては,水田・転作田からの負荷量の割合が高い.ただし,TN,TOC,SS,Na,NO3は森林からの負荷量の割合も無視できない.(4)負荷量の観点からは,水田・転作田からの負荷量抑制のための管理が重要である. さらに,水田・転作田の水管理を変化させたときの河川水水質濃度への影響,負荷量変化について検討した結果,負荷量の観点だけではなく,河川水の水質濃度やそのイオンバランスを考慮した方策についても考慮できる可能性を示した. なお,福島県内の山林流域からの放射性セシウムの濃度と負荷量についても整理した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データを順調に蓄積し,これらのデータの整理を行った.その結果,各土地利用からの流出負荷量が算出され,それぞれの濃度特性についても明らかになった.さらに,それぞれの土地利用からの流出特性が河川水質に及ぼす影響度についても計算が可能となった.とくに,水田・転作田における水管理が河川水質に及ぼす影響評価が可能となった.よって,おおむね順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は最終年となるが,水文観測と水質分析を継続し,過去2年間の蓄積データを合わせて,各土地利用からの流出特性について,より一般化を図る.また,流域レベルへの拡張の際には,流出特性のばらつき程度も考慮したものに発展させる予定である. 農地(とくに水田)からの流出水の水質が流域末端部の水質形成に及ぼす影響を定量化し,農地での流出負荷削減対策がどの程度,流域末端の水質改善に寄与するのかを明らかにする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|