本年度は,将来の洪水流量の変化を予測することを目的として,岡山県吉井川流域におけるレーダー雨量計データと気象庁が開発した地域気候モデルの一つである雲解像領域大気モデルによる現在および将来の雨量データ(以下,RCM雨量と記す)を用いて,各々の確率洪水比流量曲線を求め,流域面積による将来の洪水流量変化の違いについて検討した。 ここでは,RCM雨量のバイアス補正,面積と確率面積雨量との関係を表す確率DA関係,これに基づく確率洪水比流量曲線の3項目について検討した。 まず,RCM雨量のバイアス補正は,地域気候モデルが元来持つ出力データの偏り(バイアス)を補正するために行った。これは,レーダー雨量計および現在の気候のRCM雨量のそれぞれの年最大面積雨量に一般化極値分布を当てはめ,これらの分布による確率面積雨量の比を将来の気候の面積最大RCM雨量に乗じることにより行った。 現在および将来の確率DA関係は,レーダー雨量から推定される年面積最大雨量とバイアス補正によって得られた将来の年面積最大雨量にそれぞれ一般化極値分布を当てはめ,これらの分布から推定された確率面積雨量に基づいて求めることができる。現在および将来の確率洪水比流量曲線は,確率DA関係にDA式であるHorton式を当てはめ,これに降雨継続時間とその時間内の平均降雨強度との関係(DD関係)を表すSherman式,角屋・福島による洪水到達時間式,合理式を組み合わせることにより求められている。 これらの検討の結果,確率洪水比流量は全ての面積について将来の方が大きい値となり,その増加率は対象面積が大きくなるに従って大きくなる傾向が示された。
|