研究課題/領域番号 |
23580337
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
武山 絵美 愛媛大学, 農学部, 准教授 (90363259)
|
研究分担者 |
九鬼 康彰 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (60303872)
|
キーワード | 獣害 / バッファーゾーン / イノシシ / 狩猟 / 防獣柵 |
研究概要 |
1.地区住民による管理が可能なバッファーゾーンレンジの検討(武山) 松山市を対象に,銃猟者の活動を調査し,活動エリアや時間を把握して集落周辺バッファーゾーン形成への寄与を考察した.その結果,本研究が対象とした銃猟グループは,集落外縁部の幅600mの範囲を主な活動エリアとしていた.また,狩猟者の移動負担は,地区内の標高,道路の整備状況,および農地の集塊性と密接な関係があることもわかった. さらに,対象とした狩猟グループでは,セコと呼ばれるベテラン狩猟者の捕獲割合が7割を占めるなど,重要性の高さが立証された.本狩猟グループの捕獲実績は,松山市の全捕獲頭数の13%を占めた.また,捕獲に係る時間を測定したところ,愛媛県の最低賃金647円の保証を考えた場合,本調査事例の場合で1頭の捕獲あたり30,577円/人の人件費が必要と算出された. 2.防獣効果から見て必要なバッファーゾーンレンジの検討(九鬼) 滋賀県が推進している帯状のバッファーゾーン整備を事例に調査を行った.その結果,これらのバッファーゾーンが侵入防止柵との組合せで整備されるため,理想とするバッファーゾーンレンジは20m,補助事業として実施するために10mという目安を行政が設けていることがわかった.ただし,整備する集落とバッファーゾーンの規模のバランスについて課題があることもわかった.次に,バッファーゾーンの加害動物(イノシシ)出没に対する抑制効果を調べるため,2012年9月より9ヶ所にセンサー付きビデオを設置し,その出没状況を分析した.1日あたりの撮影回数を農作業の状況と比較したところ,バッファーゾーンがあっても侵入防止柵の隙間等から田への侵入がみられ,また緩衝帯の規模と関係なく撮影回数が高い場所もあることが得られた.したがって,対象地域で整備されたバッファーゾーンの条件では,明確な出没抑制効果はみられないと判断された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
■現在までの達成度 1.地区住民による管理が可能なバッファーゾーンレンジの検討 バッファーゾーン管理に寄与する住民活動として,狩猟者による活動実態を定量把握することに成功した.また,これらの活動を促進するために求められる基盤整備手法についても,重要な知見を得ることができた. 2.防獣効果から見て必要なバッファーゾーンレンジの検討 センサーカメラの設置により,バッファーゾーンを設置した場合の防獣効果を計測した.ただし,その有効性を立証するには至らなかった.一方,本年度の結果より,バッファーゾーンの物理的レンジのみならず,その維持管理方法,周辺の土地利用,および生息する動物種の組み合わせ等により,必要となるレンジが変動する可能性が示唆された.
|
今後の研究の推進方策 |
下記の3点を推進し,研究計画全体の集大成を図る. ・バッファーエリアにおける林業者の活動実態と空間条件の分析:愛媛県西条市丹原町を対象地域として,周辺山間部の林業者の活動と野生動物の行動との関連を調査するとともに,林業者による活動を促進するための空間条件を明らかにする. ・バッファーゾーンの管理作業と野生動物の出没との関係の分析:滋賀県を対象地域として,センサーカメラを用いた動物出没状況調査を継続するとともに,その変動に対する影響因子を明らかにする ・GISを用いたバッファーゾーンの土地利用分析と総合評価:愛媛県松山市を対象として,バッファーゾーンの定量評価を行う.また,これまでに得られた結果とGISにより分析結果を重ね合わせることにより,総合分析を行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
現地調査および研究打ち合わせのための旅費を計上する.また,研究成果公表のため,論文投稿料を計上する.さらに,調査機器運用のための電池および記録メディア等の購入費用を消耗品購入費として計上する.
|