当研究課題では,遺伝的多様性をはかるために汎用されているマイクロサテライトDNA(以下,MS:CA,CT等の数塩基からなる繰り返し配列)マーカーの単離手法の開発に焦点を当て,魚類や昆虫類等の様々な生物種に適用できる効率的な手法の開発に取り組んだ. 平成25年度は,昨年度に開発した手法の改良と検証,検証に用いる供試サンプルの捕獲を収集状況に応じて実施した.手法改良・検証では,MSマーカー配列のスクリーニング処理について検討した.MSマーカーとして利用できない配列(例えば,繰り返し数が少ない等)が多く抽出される場合,その対処法としてブロッキングバッファーを利用できる可能性を確認した.また,手法の適用(供試サンプルの捕獲)にあたっては,コイ科の水田魚類Clupeichthys aesarnensisとRasbora borapetensisを対象にMSマーカー配列を単離し,それを利用するためのPCRプライマーを設計した.結果として,各魚種約20種類の遺伝的多様性をはかるために使用可能なMSマーカーを開発することができた. 以上,研究期間全体(3年間)を通じて,魚類,昆虫類(トンボ類),甲殻類(アミ類)の計6生物種のMSマーカーを開発した.開発に用いた単離手法は生物種に依存しない統一的なものとして評価でき,当研究課題の目標を概ね達成することができた.今後は本手法の普及に向けて,より多くの生物種への適用事例の蓄積が期待される.
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