肥育牛排せつ物と搾乳牛排せつ物のそれぞれに,Mg源としてMgCl2とMg(OH)2をP源としてKH2PO4を初期材料乾燥質量1kgあたり0.15 mol添加し,無添加の対照区,MgCl2区,MgCl2+P区,Mg(OH)2+P区の4条件の堆肥化実験を行い,アンモニア揮散と材料中のMAP生成について検討を行った。 肥育牛排せつ物では,アンモニア揮散はMg(OH)2+P区で最も高く,MgCl2+P区で最も低くなった。MAP生成はMgCl2+P区において最も多く,肥育牛排せつ物ではMg源のみの添加でもMAP生成は促進されるが,P源の添加によりMAPの生成量を増加させることができた。 搾乳牛排せつ物では,アンモニア揮散はMgCl2区が最も低減された。堆肥化時のMAP生成は,Mg源とP源とを同時添加した区で多くなったが,堆肥化3日後から6日後の間にMAPの減少が観察され,アンモニア揮散による材料中のアンモニア性窒素の減少により,MAPが溶解した可能性があった。搾乳牛排せつ物では,材料中に存在するPの総量が少ないことに加え,アンモニア揮散による窒素の不足も,MAP生成を抑制していた。 堆肥の生産コストを考慮すると,添加するMg源とP源は安価な資材が望まれるため,鶏糞灰についてそのままの添加と,Pの利用性向上が見込める酸溶解液として添加について,搾乳牛排せつ物を材料とし,MgCl2および鶏糞灰中のPの添加量を初期材料乾燥質量1kgあたり0.15 molとして検討を行った。アンモニア揮散は,MgCl2区でもっとも低く,MAPはMgCl2+酸溶解液区でもっとも生成量が多くなった。また,鶏糞灰中のPはそのままではMAP生成に利用されないことが確認された。しかしながら,酸溶解液として利用することによりそのPはKH2PO4と同等のMAP生成効果が認められた。
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