研究課題/領域番号 |
23580344
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 庸 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (00323486)
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キーワード | 地球観測 / リモートセンシング / 地理情報システム / 植物季節 / 温暖化影響 |
研究概要 |
本研究課題では衛星リモートセンシングデータを利用して,常緑針葉樹の植物季節の時系列変化とそれらの空間的変化の解析を試みる。具体的には,常緑針葉樹の春季から秋季の生長期間における繁茂期・最盛期・衰退期の情報の抽出を行う。 植生が時系列で示す変化を捉えるためには,時間分解能の高いリモートセンシングデータが必要であり,衛星リモートセンシングのMODISデータを利用している。MODISデータの可視・近赤外域の反射率データの空間分解能は中程度(500m)であるため,常緑針葉樹が広域に分布する地域を研究対象地域とする必要があり,北海道・大雪山国立公園の東部地域(自然植生,エゾマツ・トドマツ)と栃木県鹿沼市近郊(常緑針葉樹の植林地)を研究対象地域として設定してある。栃木県鹿沼市での現地調査および予備的な解析結果から,対象とした画像中のピクセルが常緑樹のみではなく,落葉樹が混在しているピクセルが多く存在することが分かったため,MODISデータよりも高い空間分解能を持つALOS-AVNIR2データ(2008年~2010年)を使って,スペクトル情報の変化から,常緑樹の分布域を選定した。そして,MODISデータにおいて,常緑針葉樹がピクセルに占める割合が高い地域を選定し,植生指標画像の時系列データから,常緑針葉樹の分布域が示す,植物季節の変化に関する情報の抽出を行った。リモートセンシング画像のデータベースについては,2カ所の研究対象地域において,2000年~2010年の約10年分の整備を終えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究において,2カ所の研究対象地域のうち,特に栃木県鹿沼市の植林地についての解析を行った。MODISデータよりも空間分解能の高いALOSデータを使用して,複数時点のALOSデータのスペクトル情報の変化から,常緑樹の分布域を選定した。そして,MODISデータとの重ね合わせによって,MODISデータにおける常緑針葉樹がピクセルに占める割合が高い地域を選定し,それらの地域での植生指標画像の時系列データを作成した後,常緑針葉樹の分布域が示す植物季節の変化に関する情報の抽出を行った。なお,栃木県内と北海道内の計2カ所の研究対象地域における画像データベースについては,2000年代の10年分のデータ整備を終えた。以上のとおり,概ね,順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
植生指標画像の時系列データ作成について,NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)など,可視域・近赤外域におけるMODISデータの各バンドから作成可能な複数の植生指標を利用している。今後の研究においては,複数の植生指標の中から,常緑樹の植物季節(繁茂期,最盛期,衰退期)の変化を捉えやすい植生指標を選択する必要があり,また複数年の時系列データによって表される植物季節の時間変化傾向について解析予定である。加えて,植生種に関する現地調査データやGISデータを利用して,各ピクセルもしくはピクセル群が示す時系列変化の空間的特徴を解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画として,植物季節変化の空間的特徴の解析時に補助的情報となる,対象地域の植生種および詳細な地理情報取得のための現地調査の費用,画像データベース保存用のハードディスクなどの物品費,そして成果発表のための学会参加および論文投稿のための研究費を予定している。
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