研究課題/領域番号 |
23580346
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
西津 貴久 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40228193)
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キーワード | 低温高圧ガス / クライオスタット / 軟弱野菜 / 寒天ゲルモデル / 澱粉ゲル / 冷却 / 水分損失 / 複素誘電率 |
研究概要 |
1) 低温高圧ガス式冷却装置の改良および複素誘電率測定による水分測定 前年度に試作した「農産物冷却特性評価用クライオスタット」を一人で,かつ迅速に操作可能な専用架台を製作・設置した.さらに,後述の誘電測定用ケーブルが冷熱源より直接冷却されると誘電率測定に悪影響を及ぼすことが判明したため,内部構造の一部改修を行った. クライオスタットが耐圧仕様であるために蓋固定の作業数が多く,試料のセットから測定開始までの水分減少が避けられない.そのため水分損失量測定に,当初予定になかった誘電率による試料水分の常時モニタリングに計画を変更した.ネットワークアナライザーを用いてプローブ反射法により測定される複素誘電スペクトル(300 MHz-6 GHz)より水分を推定することとした.水分測定の可能性を検討するために,濃度の異なるスクロース水溶液を凍結させ,氷結率の違いにより,未凍結の部分の水分量を推定することとした.高温プローブ(直径6 mm)を底面に装着した2.5 mL容量のシリコン製セルに,スクロース溶液(濃度20,30,40 %) 1 mLを注入し,液体窒素を冷熱源とするクライオスタット内で-2 ℃/minの降温速度で試料を凍結した.試料温度が 設定温度(-1.8 ℃~-15 ℃)に到達後40分間恒温保持して平衡状態にした.その間,得られた測定データをHavriliak-Negami式で近似し,各パラメーターを算出した.PLS回帰分析を行ったところ,標準予測誤差は4.10 %,R²=0.956 (n=13)で未凍結水分量の推定ができることが判明した. 3) 軟弱野菜を模した実験モデル ろ紙,寒天ゲルを用いた試料と異なる蒸散特性を持つ試料を実験に供するために,澱粉ゲルを用いることとした.その調製法を確立するとともに,その冷却曲線,蒸散量の測定を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の実験結果を受けて,当初計画になかった誘電率測定系の導入とそれを用いた水分損失推定に関する検討項目が増えたこと,および誘電率測定系の導入にあたって平成23年度に設計・試作したクライオスタットの改修と検討作業が入ったため,今年度実施計画をすべて完了することはできなかった. 具体的には,今年度実施計画の2つの項目 ①モデル試料の冷却速度および水分損失の予測モデルの決定,②軟弱野菜の冷却速度および水分損失の予測モデルの決定のうち,②の項目の一部を次年度に持ち越す結果となった.
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今後の研究の推進方策 |
1) 軟弱野菜を用いた冷却速度および水分損失の測定 ホウレンソウと小松菜を用いて,ガス種,ガス圧,湿度,風速を種々に設定して,冷却速度,水分損失量の経時変化を測定する.また予冷後のL-アスコルビン酸含量,アスコルビン酸オキシダーゼ活性,呼吸商の経日変化の測定,一定期間後の黄化や腐敗程度の評価を行う.また組織の顕微鏡観察により,加圧による損傷の有無を確認する. 2) 軟弱野菜の冷却速度および水分損失の予測モデルの決定 モデルを測定データに適用し,ホウレンソウと小松菜に関する予測モデルを決定する. 以上の成果を取りまとめ,対外発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
「農産物冷却特性評価用クライオスタット」に使用する寒剤(液体窒素)に400,000円,それに加えて酵素活性測定の試薬,ガスクロマトグラフ用のガスなどの消耗品などを考慮した物品費として計500,000円を見込んでいる.それ以外に,成果発表のための旅費(133,000円),実験補助の謝金(37,000円),その他(30,000円)を見込んでいる.
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