研究課題/領域番号 |
23580349
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
奥田 延幸 香川大学, 農学部, 教授 (20253255)
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研究分担者 |
柳 智博 香川大学, 農学部, 教授 (70221645)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レタス / 異常球 / End of Day光照射 / 温暖化条件 / ファイトトロン / 赤色光 / 遠赤色光 / LED |
研究概要 |
本研究は、温暖化条件におけるレタスの異常発育のメカニズムを究明し、植物工場における異常発育防止の省エネルギー光新技術開発に関する基礎的知見を得るため、温度と日長条件を変えてEnd of Day光照射処理によるレタスの花序形成並びに茎伸長との関係を調査した。 レタスの‘マノア’、‘極早生シスコ’を供試した。2011年9月26日に播種し、無加温ビニルハウス内で生育させた(低温条件)。発芽のそろった2011年10月1日に次の光処理を開始した。光源として赤色蛍光灯および遠赤色蛍光灯を用いた。これらの光源を用いて日入り5分前から1時間照射した。光強度は、1μmol m-2 s-1~2μmol m-2 s-1に設定した。光照射無処理区(対照区)を加えた合計3処理区を設けた。この結果、自然の低温条件下では両品種ともに対照区では茎の伸長は見られなかったが,遠赤色光区では茎の伸長がやや促進された。 次に、同様の2品種を2011年11月22日に播種し、温度を30℃に設定したファイトトロン内で生育させた(最短日条件)。光源として赤色光LEDおよび遠赤色光LEDを用いて上記と同様の3処理区を設けた。その結果、両品種ともに遠赤色光区では茎伸長が促進されたが、展開葉数は少なくなり、脆弱なレタス苗となった。一方、赤色光区では展開葉数が増加して、より健全なレタス苗になった。さらに、 2012年1月16日に播種して同様の処理区を設けた(短日条件)。その結果、処理60日後では両品種ともに遠赤色光区では茎伸長が促進され赤色光区では茎伸長が抑制される傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温期にはレタスの茎伸長および花芽形成は少なく、高温条件になるほどそれらが促進され,異常球の形成につながるものと考えられた。また,ファイトトロンを用いた高温条件下で暗期直前の電照処理(End of Day光照射処理)を検討した結果,赤色LED光によるEnd of Day光照射処理は異常球形成の原因となる茎伸長が抑制されることを見出した。さらに,高温条件下で日長条件が異なる場合,より短日条件では茎の伸長程度が緩慢であり,高温・短日条件を組み合わせることの有効性を明らかにした。 以上の点から,現時点の達成度は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
レタスの異常球形成の原因となる茎伸長は高温条件になるほど促進された。この茎伸長は,暗期直前の電照処理(End of Day光照射処理)により影響され,遠赤色LED光照射では茎伸長が助長され,赤色LED光では抑制された。つまり,赤色LED光によるEnd of Day光照射処理は異常球形成の原因となる茎伸長を抑制する効果のあることを見出した。さらに,高温条件下で日長条件が異なる場合,より短日条件では茎の伸長程度が緩慢であり,温度条件と日長条件を組み合わせることで異常球形成に繋がる茎伸長を抑制する可能性が示唆された。 これらのことから,今後は,高温条件下でのEnd of Day光照射処理に日長処理を組み合わせて,複合環境制御に繋がる知見を得る必要があると考えられた。また,育苗時期での処理がその後の生育後半にも後作用として有効であるならば,異常球形成抑制のための投入エネルギーの低減を図ることが可能になると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
育苗時の環境制御が生育後半にも効果が残るとすれば,育苗期間中の短期間のみのエネルギー投入で済むと考えられる。そこで,平成23年度の実験データを基に,24年度はレタスの茎伸長の少ない条件,すなわち短日条件・低温条件にEnd of Day光照射処理を加えて育苗し,その後に高温条件において花序形成と茎伸長について調査する. 我が国では,レタスの茎伸長が促進される高温期は日長時間の長い時期である。この時期に短日処理でレタスを生育させ,さらに低温処理やEnd of Day光照射処理の光質制御することで茎伸長の程度の変化を調査する。育苗後,生物環境調節装置等の高温条件に移して一定期間育成する.また,圃場においても栽培して自然環境下での適応性を検討する. これらの中から,定期的に採取した植物体について茎の節間伸長程度等の生育調査を行う.さらに,茎頂部の形態観察を詳細に調査する.これらの実験に際して育成中の光環境の測定および制御等については前年と同様に行う.
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