研究課題/領域番号 |
23580349
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
奥田 延幸 香川大学, 農学部, 教授 (20253255)
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研究分担者 |
柳 智博 香川大学, 農学部, 教授 (70221645)
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キーワード | レタス / 異常球 / End of day 光照射 / 温暖化条件 / 植物工場 / 夜冷処理 / 赤色光 / 遠赤色光 |
研究概要 |
6月11日に播種し、6月17日から昼夜30℃に設定したファイトトロン内で栽培した。処理区は、17:00から翌朝9:00までファイトトロン内で暗黒条件にした短日処理区、同時刻に15℃・暗黒条件に移動した短日夜冷処理区、並びに無処理区の3区とした。処理期間は6月17日から30日間行い、処理30日後および58日後のサンプリングの結果、両品種の茎長は短日夜冷処理区で短くなる傾向が見られた。58日後における短日処理区および短日夜冷処理区では花芽の発達が抑制された。 8月27日に播種し、無加温のガラス温室で栽培した。処理は17:00から翌朝9:00まで15℃・暗黒条件に移動する短日夜冷処理を行った。処理区は9月2日から4週間処理した4週間処理区、9月2日から2週間処理した前半2週間処理区、9月16日から2週間処理した後半2週間処理区、並びに無処理区の4区とした。茎長は対照区と比較して短日夜冷処理を行った区で短くなった。9月30日のサンプリングでは4週間区で茎長が著しく短くなった。花芽発達段階は、後半2週間処理区では膨大期、4週間処理区で未分化期となった。 11月6日に播種し、11月11日から昼夜30℃に設定したファイトトロン内で栽培した。処理は、16:00から翌朝8:00まで15℃条件に移動した夜冷処理区と無処理の対照区に大別し、さらに夜冷処理中の光条件を暗黒(夜冷暗黒区)、16:00から17:00まで1~2μmolm-2s-1の赤もしくは遠赤色のLED光源で光照射をした夜冷赤色光区、夜冷遠赤色光区の3区に分けた。処理期間は11月28日から2週間行い、処理後14日後および42日後のにサンプリングした。14日後における茎長は夜冷赤色光区で最も短くなった。42日後における茎長で夜冷暗黒区および夜冷赤色光区で最も短くなった。42日後における花芽発達段階は夜冷した処理区では未分化であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温期にはレタスの茎伸長および花芽形成は少なく、高温条件になるほどそれらが促進され,異常球の形成につながるものと考えられた。昨年度の結果から,高温条件下で日長条件が異なる場合,より短日条件では茎の伸長程度が緩慢であり,高温・短日条件を組み合わせることの有効性を明らかになり,この結果を踏まえて,今年度は,ファイトトロンを用いた高温条件下をベースに日長処理(短日)・低温条件・光照射を組み合わせたで条件で検討した。この結果,短日処理・夜間の低温処理がレタスの茎伸長の抑制、すなわち異常球の抑制に効果的であることを明らかにした。この低温処理は,育苗期間の全期間で最も効果的であったが,育苗期間の成育前半よりも成育後半でその処理効果がより増進した。また,低温処理と光処理との相乗効果を期待して,夜冷処理と赤もしくは遠赤色のLED光源によりう光照射をした結果,夜冷処理のみおよび夜冷処理+赤色光照射処理で茎伸長の抑制が認められた。短日処理,育苗後半の夜冷処理と赤色LED光によるEnd of Day光照射処理は異常球形成の原因となる茎伸長が抑制されることを見出した。これらの知見を,実際栽培に向けた最終年度の研究につながるものと考えている。 以上の点から,現時点の達成度は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
植物工場での生産が多いレタスでは,高温条件により異常球の生障害が発生する。この原因となる茎伸長は高温条件になるほど促進されるが,茎伸長は,暗期直前の電照処理(End of Day光照射処理)により影響され,遠赤色LED光照射では茎伸長が助長され,赤色LED光では抑制された。つまり,赤色LED光によるEndof Day光照射処理は異常球形成の原因となる茎伸長を抑制する効果のあることを見出した。また,高温条件下で日長条件が異なる場合,より短日条件では茎の伸長程度が緩慢であり,温度条件と日長条件を組み合わせることで異常球形成に繋がる茎伸長を抑制する可能性が示唆された。さらに短日処理,育苗後半の夜冷処理と赤色LED光によるEnd of Day光照射処理は異常球形成の原因となる茎伸長が抑制されることを見出した。 これらのことから,今後は,高温条件下でのEnd of Day光照射処理に日長処理・夜冷処理を組み合わせて,複合環境制御で育苗したレタス苗を用いた実際栽培に繋がる知見を得る必要があると考えられた。特に,育苗時の処理が定植後の成育に影響するかどうか、すなわちレタス成育のアフターエフェクトを明らかにし,実際栽培への応用に向けた知見を得る研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
育苗時の環境制御が生育後半にも効果が残るとすれば,育苗期間中の短期間のみのエネルギー投入で済むと考えられる。そこで,植物工場での栽培での応用を検討するために,平成23,24年度の実験データを基に,25年度ではレタスの茎伸長の少ない条件,すなわち短日条件・低温条件にEnd of Day光照射処理を加えて育苗し,実際の圃場で成育させて花序形成と茎伸長について調査する. 我が国では,レタスの茎伸長が促進される高温期は日長時間の長い時期である。この時期に短日処理でレタスを育苗し,さらに低温処理やEnd of Day光照射処理の光質制御を複合的に組み合わせることで茎伸長の程度の変化を調査する。育苗後,実際栽培に近い条件に移して一定期間育成する.また,太陽光利用型の施設での栽培を念頭に圃場においても栽培して自然環境下での適応性を検討する. これらの中から,定期的に採取した植物体について茎の節間伸長程度・花芽発達程度等の生育調査を行う.さらに,茎頂部の形態観察を詳細に調査する.これらの実験に際して育成中の光環境の測定および制御等については前年と同様に行う.
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