栽培段階の生野菜の汚染経路の一つとして、農業用水の糞便汚染が考えられる。そこでベトナム、ラオスおよびカンボジアの研究所と連携して、同国内の農業用水を収集し、「食品衛生検査指針」に準拠して大腸菌群、糞便系大腸菌、大腸菌およびサルモネラの検出を行うとともに、分離菌株の同定を行った。 ベトナムはホーチミン市周辺で2回、ラオスはビエンチャン近郊およびルアンナムタ近郊で3回、カンボジアはプノンペン周辺で2回、農場で使用している用水を収集した。分析を行った約360の農業用水のおよそ半数に相当する184検体から糞便系大腸菌が分離され、その大部分は大腸菌であった(大腸菌の血清型およびベロ毒素生産性は確認していないが、βグルクロニダーゼ活性から判断すると、おそらく、ベロ毒素生産性はないと推定される)。通常の水系から分離されることが珍しくないグラム陰性ブドウ糖酸化型の細菌や、野菜の常在細菌でもあるグラム陰性乳糖発酵型(Klebsiella属など)の細菌に加えて、Salmonella属細菌やCronobacter Sakazakiiといった食中毒起因性の細菌、あるいは緑膿菌も分離された。検体収集地点に隣接して牧場が存在する所や、食鳥を飼育する池の水を農業用水に使用する所も少なくなく、そのような地点の農業用水からは糞便汚染指標菌が検出されることが多かったことから、動物糞便による農産物の細菌汚染の可能性が示唆された。 また本年度は現地の農業関係者を指導する立場にあるカンボジア王立農業大学およびラオス清浄農業開発センターの研究者を国内に招聘し、上記の研究の一部を共同で実施するとともに、本研究に係る国際セミナーを実施した。
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