研究課題/領域番号 |
23580356
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
齋藤 高弘 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50221990)
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キーワード | 蛍光 / 麹菌 |
研究概要 |
米麹の含水率は菌の繁殖と共に17~33%の範囲で減少するため、含水率を13.8、24.2、33.2%に調整した蒸米を用い、含水率が蛍光強度に与える影響を検討した。その結果、検出波長630nmの値に大きな変化は見られず、含水率に影響されない事を確認した。また、検出波長480nm付近における蛍光強度は含水率の減少と共に35451(counts/20μs)から49059(counts/20μs)に増加した。この結果からも含水率が低くなると考えられる培養後期に検出波長480nm付近の値は増加しており、その増加と比較して蒸留水の値は3~248(counts/20μs)と遥かに低い事から、検出波長480nm付近の蛍光強度は含水率などにより変化した米の性状が影響していると考えられた。米麹は培養に伴いグルコース生成する1)ため、2、6、10%に調整したグルコース水溶液を用い、グルコースが蛍光強度に与える影響を検討した。その結果、検出波長630nmの値に大きな変化は見られず、3~248(counts/20μs)と低い値となった事から、グルコース濃度に影響されない事を確認した。蛍光分光法が様々な清酒麹に利用可能か検討するため、吟醸用麹と元立用麹を用いて48時間培養した米麹を測定した。その結果、吟醸用麹と元立用麹共に検出波長630、690nmにおける蛍光強度の増加が見られたため、本手法は様々な清酒麹に利用可能であると確認された。培養48時間の米麹に2.66WのUVを10秒間照射し滅菌処理した米麹を用い、蛍光強度に与える影響を確認した。滅菌処理を施した米麹の蛍光スペクトルより、滅菌する事で検出波長630、690nmにおける蛍光強度のピークは消失した。この事から検出波長630、690nmにおける値は麹菌の何らかの活性を捉えていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の遂行にあたり、発光因子の特定や検出波長の妥当性を明らかにするために必須となる、米や麹菌含有成分等の発光に及ぼす影響の解明が成され、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
麹菌の主な役割は、麹酵素による蒸米の溶解と糖化、清酒酵母の増加と発酵促進があげられる。この過程では、菌体量のS字曲線的増加、生菌の増殖活動に伴うATP量の変化、アミラーゼ、カルボキシペプチダーゼなどの酵素活性の変化が起きる。そこで、麹菌の活性を評価する際に用いられるこれらの項目と発光値を、繁殖過程を細かく分割して計測し、相互の関係を明らかにする。これらの結果より、発光が麹菌増殖量・エネルギー、酵素活性などの何を主たる要因として結びついているのかを特定する。合わせて、本手法の分析精度や分析限界を既存の手法と比較してその優位性を判断する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、ATPや酵素活性と発光量との関係を解明する前に、より大きな影響があると考えられる水分や麹金泰内部成分との関係を重点的に行った。よって、これらの分析に必要となる費用は次年度の研究計画と合わせて活用する計画である。
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