水稲植被率を水稲上方からのレーザスキャナ計測より測定するモデルの改良に向けた基礎データ収集を目的として,小型航空プラットフォームの開発ならびに観測実験データの取得に取り組んだ。 小型航空プラットフォームとして,マルチコプター(6枚羽)を採用することで,当初予定していたヘリコプタタイプにくらべ小型・軽量化が進んだ。また、超低空の低速飛行時に計測対象を掻き乱す作用が低減し、超低空飛行ではヘリコプタタイプよりもマルチコプタータイプの方が適していることが確認された。ただ、防振効果については大きな改善が見られなかった。また、飛行システムに搭載した単周波GPSシステムによる測位性能を別途評価したところ、動的干渉測位により水平位置の測位精度として1.0mが期待できることが確認された。 飛行計測したレーザスキャナデータについて、地上実験区画に対応するデータに関して鉛直分布を地上実験結果と比較し、水稲群落上層の反射点は少なく、下層に向かうにつれ反射点数が多くなるという、地上実験結果をほぼ同様の傾向が確認できた。しかし、位置特定を可視化画像に頼る処理方法のため、茎葉繁茂時の飛行計測は実施しなかった。 一方,観測実験データの蓄積という観点では,地上実験によりアルゴリズム改良のための基礎データの取得を実施した。実圃場内に栽培密度、植付け方向が異なる複数の区画を設置し、前年度制作した地上実験装置により3~5日間隔で計測データを取得した。この際、鉛直と斜めの2つの方向(レーザ照射面角度)から水稲を計測した。地盤高を基準とするレーザ計測高さを用いると、草丈と99%タイルレーザ計測高さの間には、イネの生育、レーザ照射角度、植付け方向、栽植密度によらず高い相関が確認された。ただ栽植密度によっては、植付け方向の違いにより取得されるレーザスキャナデータの鉛直分布が変化する可能性が示唆された。
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