研究課題/領域番号 |
23580362
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
若松 純一 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (30344493)
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キーワード | 亜鉛プロトポルフィリンIX / 食肉製品 / 色調 / 栄養 |
研究概要 |
平成24年度は、非加熱食肉製品中のZnPPを多量に作らせるための基礎的検討と、ZnPPの栄養学的優位性の検討を行った。 ZnPP形成を促進して色調を改善することを目的に、モデル実験系とサラミを製造して検討した。モデル実験系において、酸の種類によって、ZnPPの形成量は異なり、その違いは微生物の存在下で顕著に表れた。微生物の存在下ではZnPP形成の至適pHがより高いpHに移動し、形成量も著しく増加した。モデル試料より単離した2種類の細菌がZnPP形成を促進することを明らかにした。ある種の酸の添加は、サラミ中におけるZnPP形成を促進して色調を改善し、サラミ中の菌叢を変化させた。本研究の結果より、ZnPP形成能の優れた細菌を添加することや、酸の種類、pHおよび細菌を組み合わせることによって、発色剤無添加の食肉製品中におけるZnPP形成を促進して色調を改善できることが示唆され、国際学会にて発表できた。 ZnPPの亜鉛補給効果ならびに吸収促進効果、ならびに他のミネラルに及ぼす影響の検討では、亜鉛量をやや欠乏状態(Zn 5 ppm)にして、試薬ZnPP、肉類より調製したZnPP、ならびに無機亜鉛を比較した。ZnPP群の体重増加率は、無機亜鉛群よりも有意に低かった。群間で亜鉛量に差がない組織もあったが、血清、精巣、腎臓、骨および皮では、試薬ZnPP群は無機亜鉛群よりも同程度あるいは有意に低いことが示された。また、活性中心に亜鉛を有する血清アルカリホスファターゼ活性でも、ZnPP群は、無機亜鉛群よりも有意に低く、Zn欠乏群と同程度であった。血清および組織中の他のミネラル(Mg、Ca、Fe、Cu)含量の検討では、ZnPPの摂取は影響を及ぼさなかった。以上のことから、ZnPPは無機亜鉛よりも亜鉛補給効果が高くないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した「研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか」として、以下の3点を挙げた。(1) ZPPを多く含有し、色調の優れた非加熱食肉製品(サラミ)の開発を行う。(2) 製造中に形成されるZPPが乾塩漬食肉製品の色調、つまり消費者の購買意欲の主因である見た目に対してどのように影響を及ぼすのか、各種パラメータとの関連性について調べる。(3) 発色剤を使用しない食肉製品で形成されるZPPが栄養学的に亜鉛の吸収促進効果をもたらすかどうか、ヘム鉄の分解等により、鉄の利用性が低下するかどうかについて、動物実験を用いて明らかにする。 本年度2年目を終了して、(1)については、ZnPP形成能の優れた細菌を添加することや、酸の種類、pHおよび細菌を組み合わせることによって、発色剤無添加の食肉製品中におけるZnPP形成を促進して色調を改善できることを示し、概ね達成した。(3)については、本年度の結果より、残念ながらZnPPの亜鉛補給効果が一般的な無機亜鉛と比べて低かったことから、詳細な検討は必要ないと判断し、これについては中止することにした。このように、申請書記載の3本柱のうち、2つについては概ね達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、申請書記載の3本柱のうち、2つについては概ね達成できたことから、食肉のパラメーターが非加熱乾塩漬食肉製品の色調、つまりZnPP形成能にどのように及ぼすかについて、重点的に検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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