研究課題/領域番号 |
23580366
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
藤村 忍 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20282999)
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研究分担者 |
門脇 基二 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90126029)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 食肉 / 品質向上 / 呈味 / メタボローム / 遺伝子発現 / アミノ酸 / グルタミン酸 / リジン |
研究概要 |
食肉の高品質化の中で呈味の向上に対する期待は大きいが、保存熟成中の成分変化を除き、呈味成分量の調節に関する有効な情報は極めて不足している。本研究は、食肉高品質化のため、飼料栄養素の調節による食肉呈味向上を図り、そのモデル家畜のグルタミン酸(Glu)及び関連アミノ酸の代謝メカニズムを解析し、次いでメカニズムを考慮した食餌栄養調節による高品質食肉の作出を目的とする。この解析にメタボローム、遺伝子発現解析等を用いる。飼料リジン(Lys)量を調節し、5または10日間の給与により、筋肉遊離Glu量を増加させたモデルブロイラーのメタボローム解析の結果、肝臓のみでなく筋肉でもサッカロピンやピペコリン酸系によるLys異化が生じている可能性を得た。このとき両組織のLysine α-ketoglutarate reductase(LKR)遺伝子の発現上昇が見られた。筋肉では遊離Gluの増加が見られた一方、肝臓では遊離Gluの増加は見られなかった。血漿遊離Glu濃度は変化しなかった。このことから筋肉においてLys異化が生じ、Glu増加が生じる可能性が示された。一方、代謝経路は報告されていないが、Lysと構造が類似した複数の物質の増加が確認された。また暑熱環境下で飼養した場合にイミダゾールジペプチドのカルノシン量が筋肉で減少する可能性を得、これには塩基性アミノ酸の代謝が関与し、飼料での調節で対処できる可能性を得た。さらに飼料BCAAなどの給与による解析を進めた。これらの成果の一部は、57th International Congress of Meat Science and Technology等において6件の学会において研究発表を行った。また飼料に関する研究会にて招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概要で示した様に、Lys給与動物のメタボローム解析より、肝臓のみでなく筋肉でもサッカロピンやピペコリン酸系によるLys異化が生じている可能性を得た。このとき両組織のLKR遺伝子の発現上昇が見られ、筋肉では遊離Gluの増加が見られた。一方、肝臓では遊離Gluの増加は見られなかった。血漿Gluは変化しなかった。これまでの知見と異なり、筋肉でのLys異化を確認したことなど、本研究課題の目的である飼料栄養素によるGlu増加メカニズムの一端を明らかにした。この検討過程で、サッカロピン及びピペコリン酸系の中間代謝物の変動率には肝臓と筋肉での相違が見られ、またGluの応答は組織ごとに異なった。これらのことからGlu異化までを含む代謝を詳細に解析する必要が示された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果を基盤に、メタボローム及び遺伝子発現解析等を用いて飼料アミノ酸の給与に伴う筋肉Glu量の増加メカニズムの解明を進めるとともに、食肉の効率的な食味向上のための条件を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、飼料成分により筋肉中Glu量を増加させ、そのモデル肉(肉養鶏)の代謝メカニズムを検討し、飼料による食肉の呈味調節機構を明らかにするものであるが、動物飼育に必要な恒温飼育室及び飼育設備、呈味成分の抽出のためのホモジナイザー、成分測定のためのHPLC、全自動アミノ酸分析機及びタンパク質の遺伝子発現解析に関するリアルタイムPCR等の機材は全て整っている。よって主な研究費は消耗品費である。次年度に使用する予定の交付金は4月当初の試験のための消耗品購入のために使用するものである。具体的な計画は次の通りである。Lys及びBCAA量を調節した飼料を調製し、分枝アミノ酸給与による遊離Glu増加筋肉を作出する。作出したモデル動物の筋肉について、Glu及び代謝関連生成物量をCE-MS/MS等によりメタボローム解析し、次いでGlu合成及び分解に関与する全ての酵素タンパク質のmRNA遺伝子発現とGlu量の相関解析を行う。上記は主に研究代表者が担当する。研究分担者はアミノ酸定量の部分を担当し、またGlu量と代謝関連酵素の発現解析の結果に基づく一連のアミノ酸代謝について代表者とともに解析を行う。また第58回Inter national Congress of Meat Science and Technology(カナダ)での研究発表と論文投稿を計画している。国内旅費は学会発表及び情報収集を目的とし、謝金等の研究補助は実験動物管理に対する謝金である。
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