研究課題
いわゆる「ウズラ」と呼称される種は,系統発生的にニホンウズラ等の旧世界ウズラとコリンウズラ等の新世界ウズラに分類される。実験動物は目的に応じて多くの種が用意されることが望ましいので,新たに新世界ウズラに属するコリンウズラ(成体重約250g)と新たに導入したブロイラータイプニホンウズラ(成体重約300g)において,飼育ケージの新規開発,代理卵殻を用いた培養法の樹立と,ニホンウズラと異科間キメラの作出をした。コリンウズラ胚の培養は,ニホンウズラ胚の二段階培養法を一部改変し,第一段階の培養時間(51~53,63~65時間),培養液{ニワトリ,ニホンウズラ,コリンウズラ水溶性卵白},第二段階の代理卵殻(ニワトリ約45g卵重, ニワトリ約38g, ニワトリ約25g, ブロイラータイプニホンウズラ約15g),第一段階の代理卵殻(ブロイラータイプニホンウズラ約15g)を孵化まで用いる培養法の簡略化について比較した。さらに,コリンウズラ胚培養法を活用して,伴性劣性アルビノウズラ胚盤葉解離細胞をコリンウズラ胚に導入した。その結果,ニワトリの水溶性卵白を培養液に用い,第一段階培養期間は63~65時間,代理卵殻はニワトリ38g卵殻(孵化率39%)あるいはウズラ15g卵殻(孵化率37%)が推奨された。但し,ニワトリ38gおよび25g卵殻は入手が困難であった。第一段階から代理卵殻を15gのウズラ卵殻で行い,移植をしない簡略化法では孵化率31%であった。キメラ胚においてドナー由来の羽装が確認され,ドナー由来のゲノムDNAの増幅産物が検出された。以上の結果より,二段階培養法におけるブロイラータイプニホンウズラ卵殻の可能性が示され,コリンウズラ胚培養における好適な培養条件が示された。新世界ウズラに属するカリフォルニアウズラ,ウロコウズラ,コリンウズラの白色変異体も新たに導入し育成した。
2: おおむね順調に進展している
新旧両世界ウズラの生物学的特性を明らかにして実験動物化をするために,小規模研究室における飼育体制を開発することと,卵用ニホンウズラ,肉用ニホンウズラおよびコリンウズラの新鮮および凍結融解した生殖細胞の移植と個体発現を目指すことが目的であった。飼育ケージの新規設計をして,大型サイズのウズラ類飼育ができるようになった。生殖細胞の移植と個体発現に関しては,基礎段階である胚培養条件を比較検討して,良好な孵化率(30-40%)を得ることができるようになった。将来の生殖細胞を含む胚盤葉細胞を導入したが,生殖細胞の追跡は未完成であった。ニホンウズラとコリンウズラのゲノム識別可能なPCRプライマーは開発して,キメラ実験において同定できるようになった。新世界ウズラに属するカリフォルニアウズラ,ウロコウズラ,コリンウズラの白色変異体を導入することができたので,次年度の準備も整った。
新たに導入した旧世界ウズラに属する大型に育種した肉用ニホンウズラおよび新世界ウズラに属するカリフォルニアウズラ,ウロコウズラ,白色系コリンウズラを増殖して,生物学的特性を明らかにし,実験動物としての特性を明らかにする。新旧両世界のウズラ類の始原生殖細胞の別個体へのの移植と個体発現を目指す。胚発生初期(始原生殖細胞血中循環期)の胚周縁静脈から血液を採取し,免疫磁気ビーズ法,ナイコデンツ濃度勾配遠心分離法,ACK赤血球溶血除去法で始原生殖細胞と血球を分離し,始原生殖細胞画分を液体窒素下で凍結保存する。レシピエントの生殖細胞除去として,孵卵前にブスルファン投与,孵卵前および始原生殖細胞血中循環期に軟X線照射することによりほとんど胚発生の正常な進行を阻害せずにレシピエント胚の始原生殖細胞を減少させる方法を新旧両世界ウズラ類に適用する。これまでの研究成果を国際学会(アジア太平洋州畜産学会,2012年11月)および日本家禽学会〔2013年3月)に発表し,国内外の研究者に新旧両世界のウズラ類を広く研究に活用してもらうよう広報する予定である。
ウズラ類飼育のための飼料(40万円程度),飼育管理補助のための謝金(10万円程度),PCR用タックポリメラーゼ等の試薬・消耗品類(20万円程度),国内及び国際学会での研究発表のための旅費等(20万円程度)に使用する計画である。大型備品の購入計画はない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (14件) 備考 (1件)
Journal of Reproduction and Development
巻: 58 ページ: 432-437
10.1262/jrd.2012-045
北信越畜産学会報
巻: 102 ページ: 19-25
http://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/profile/ja.WFfCPpkh.html?id=WFfCPpkh&lng=ja