研究課題
「ウズラ」と呼称される種は系統発生的には,コリンウズラ(Colinus virginianus)やウロコウズラ(Callipepla squamata)等,キジ目ナンベイウズラ科に分類される新世界ウズラとニホンウズラ(Coturnix japonica)やヒメウズラ(Coturnix chinensis)等,キジ目キジ科に分類される旧世界ウズラが存在する。実験動物は目的に応じて多くの種が用意されることが望ましいので,コリンウズラ,ウロコウズラ,ニホンウズラ(産卵用タイプと肉用タイプ)について比較検討した。1.肉用タイプのニホンウズラメスと産卵用タイプの系統から性染色体性劣性アルビノ系統オスを交配して,肉用タイプのニホンウズラにアルビノ遺伝子を導入した。これをさらに累進交雑して,性判定が容易で,扱いやすい大型サイズのアルビノ羽装の系統が造成された。野生型羽装産卵タイプのウズラ始原生殖細胞を造成した肉用タイプアルビノウズラに導入したところドナー由来の羽装を示す次世代が1個体(1/39)産出された。2.コリンウズラとニホンウズラの胚培養システムを簡略化して一段階で孵化させるシステムを開発し,従来法に準ずる孵化率を得た。すなわち,前者では簡略法および従来法でそれぞれ孵化率31%(16/51)および37%(27/73),後者ではそれぞれ27%(14/52)および40%(26/65)であり,有意差はなかった。3.新たに導入した白色羽装のコリンウズラの形質はさらなる解析が必要であるが優性形質である可能性が高い。4.ウロコウズラの染色体DNA反復配列(CSQ-BamHI)は、カンムリウズラおよびコリンウズラの 反復配列(CCA-BamHI、CVI-MspI)と高い相同性を示した。 また,CSQ-BamHIの染色体上の分布は、同じ属のカンムリウズラにおける分布と類似していた。
2: おおむね順調に進展している
新旧両世界ウズラの生物学的特性を明らかにして実験動物化をするために,小規模研究室における飼育体制を開発することと,卵用ニホンウズラ,肉用ニホンウズラおよびコリンウズラの新鮮および凍結融解した生殖細胞の移植と個体発現を目指すことが目的であった。新規設計した大型ウズラ用の飼育ケージにより容易にケージ内繁殖ができた。生殖細胞の移植と個体発現に関しては,基礎段階である胚培養条件をさらに改良簡易化して,肉用タイプのニホンウズラ卵殻(卵重で15g)を代理卵殻に用いることにより一段階で孵化まで導けるようになった。産卵タイプ(野生型羽装)のウズラ始原生殖細胞を造成した肉用タイプアルビノウズラに導入したところドナー由来の羽装を示す次世代が1個体(1/39)産出された。本年度,白色羽装のコリンウズラ1ペアから増産を試み,8羽となった。白色羽装のコリンウズラの形質はさらなる解析が必要であるが優性形質である可能性が高い。導入したウロコウズラは産卵したが,受精卵が得られなかった。
扱いやすい大型サイズのアルビノ羽装の系統が造成されたことから,この系統を生殖細胞移植のレシピエントに用いて,導入生殖細胞の次世代発現を目指す。新世界ウズラに属するウロコウズラ,白色系コリンウズラを増殖して,生物学的特性を明らかにし,実験動物としての特性を明らかにする。ウロコウズラとコリンウズラの雑種個体(オス)を2羽入手したので,これの染色体分析と,雑種再現,雑種の妊性確認を試みる。新旧両世界のウズラ類の始原生殖細胞の別個体へのの移植と個体発現を目指す。胚発生初期(始原生殖細胞血中循環期)の胚周縁静脈から血液を採取し,免疫磁気ビーズ法,ナイコデンツ濃度勾配遠心分離法,ACK赤血球溶血除去法で始原生殖細胞と血球を分離し,始原生殖細胞画分を液体窒素下で凍結保存する。レシピエントの生殖細胞除去として,孵卵前にブスルファン投与,孵卵前および始原生殖細胞血中循環期に軟X線照射することによりほとんど胚発生の正常な進行を阻害せずにレシピエント胚の始原生殖細胞を減少させる方法を新旧両世界ウズラ類に適用する。国内外の研究者に新旧両世界のウズラ類を広く研究に活用してもらうよう広報する予定である。
ウズラ類飼育のための飼料(40万円程度),飼育管理補助のための謝金(10万円程度),PCR用タックポリメラーゼ等の試薬・消耗品類(20万円程度),国内及び国際学会での研究発表のための旅費等(20万円程度)に使用する計画である。大型備品の購入計画はない。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Journal of Poultry Science
巻: 50 ページ: 155-158
10.2141/ jpsa.0120131
Journal of Reproduction and Development
巻: 58 ページ: 432-437
10.1262/jrd.2012-045
http://karamatsu.shinshu-u.ac.jp/lab/ono_kagami/hasseiken.htm