研究課題
「ウズラ」と呼称される種は系統発生的には,コリンウズラ(Colinus virginianus)やウロコウズラ(Callipepla squamata,)等キジ目ナンベイウズラ科に分類される新世界ウズラとニホンウズラ(Coturnix japonica)やヒメウズラ(Coturnix chinensis)等キジ目キジ科に分類される旧世界ウズラが存在する。さらに,キジ目キジ科に分類され,ウズラとは近縁のイワシャコ(イワシャコ属,Alectoris chukar)が存在する。実験動物は目的に応じて多くの種が用意されることが望ましいので,これらについて比較検討した。異属間キメラの作成:コリンウズラの胚盤葉解離細胞を伴性劣性アルビノウズラに導入して異科間キメラを作出した。胚操作後の培養は昨年度までに実用化したSimple-step法を採用した。PCRによりドナー由来の産物は得られたが,孵化には至らなかった。白色コリンウズラの系統造成:1ペアからの増殖は近交度も高く,低効率であったので野生型羽装個体との交配からF2世代で白色コリンウズラの増殖をした。例数不足であるが劣性形質であると考えられる。核型解析:新世界ウズラに属するウロコウズラと旧世界ウズラ類縁のイワシャコの動原体特異的反復配列を単離し,すでに明らかになっているニワトリ,旧世界ウズラのニホンウズラおよびヒメウズラ,新世界ウズラのコリンウズラおよびカンムリウズラと比較した。イワシャコの反復配列分布は染色体サイズと相関があったが,ウロコウズラを含む新世界ウズラでは,動原体反復配列の染色体サイズと相関する分布と相関しない分布があった。
2: おおむね順調に進展している
新旧両世界ウズラの生物学的特性を明らかにして実験動物化をするために,小規模研究室における飼育体制を開発することと,卵用ニホンウズラ,肉用ニホンウズラおよびコリンウズラの新鮮および凍結融解した生殖細胞の移植と個体発現を目指すことが目的であった。新規設計した大型ウズラ用の飼育ケージは省スペースでありケージ内繁殖が容易である。名大鳥類バイオサイエンスセンターの新規ウズラケージのモデルとして有効利用された。生殖細胞の移植と個体発現に関しては,大型ウズラの卵殻(卵重で15g)と小型のニワトリ卵殻((卵重で25~38g,名大鳥類バイオサイエンスセンター提供)を併用して代理卵殻に用い,一段階で孵化まで導けるようになった。この培養技術を用いて,コリンウズラの胚盤葉解離細胞を伴性劣性アルビノウズラに導入して異科間キメラを作出した。しかし,PCRによりドナー由来の産物は得られたが,孵化には至らなかった。白色コリンウズラの系統造成に関しては野生型羽装個体との交配からF2世代で白色コリンウズラを増殖をした。遺伝解析では例数不足であるが劣性形質であると考えられる。名大動物遺伝制御学研究室との共同研究により新世界ウズラに属するウロコウズラと旧世界ウズラ類縁のイワシャコの動原体特異的反復配列を単離し,すでに明らかになっているニワトリ,旧世界ウズラのニホンウズラおよびヒメウズラ,新世界ウズラのコリンウズラおよびカンムリウズラと比較した。イワシャコの反復配列分布は染色体サイズと相関があったが,ウロコウズラを含む新世界ウズラでは,動原体反復配列の染色体サイズと相関する分布と相関しない分布があった。静岡大学農学部細胞生物学研究室との協同研究によりニホンウズラにおいて卵細胞内精子注入法による孵化例を得た。この成果に関しては細胞内精子注入後の受精卵の培養方法が有効であることが実証された。
ニホンウズラにおいては胚発生中の検卵が容易な白色卵殻形質を黒色羽装および野生型羽装ウズラに導入して,実験動物として扱いやすい系統を造成する。この系統を生殖細胞移植のドナーおよびレシピエントに用いて,導入生殖細胞の次世代発現を目指す。新世界ウズラに属するウロコウズラ,白色系コリンウズラを増殖して,生物学的特性を明らかにし,実験動物としての特性を明らかにする。ウロコウズラとコリンウズラの雑種個体(オス)を2羽趣味家から提供を受けたので,これの染色体分析と,雑種再現を試みる。新旧両世界のウズラ類の始原生殖細胞の別個体へのの移植と個体発現を目指す。胚発生初期(始原生殖細胞血中循環期)の胚周縁静脈から血液を採取し,ナイコデンツ濃度勾配遠心分離法およびACK赤血球溶血除去法で始原生殖細胞と血球を分離する。レシピエントの生殖細胞除去として,現在最も効率が良いと考えられる方法,すなわち,孵卵前に乳化ブスルファン投与によりほとんど胚発生の正常な進行を阻害せずにレシピエント胚の始原生殖細胞を減少させる方法を新旧両世界ウズラ類に適用する。卵細胞内精子注入法による孵化が可能となったので,さらに孵化率を向上させる。国内外の研究者に新旧両世界のウズラ類を広く研究に活用してもらうよう広報する予定である。
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