研究課題/領域番号 |
23580371
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
平田 昌彦 宮崎大学, 農学部, 教授 (20156673)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | ウシ / 個性 / 評価 / 大胆 / 臆病 / 草地管理・利用 |
研究概要 |
本研究課題の第1の目的である「ウシの個性の体系的把握と理解」のために2つの研究を,第2の目的である「ウシの個性の草地管理・利用への応用の探索」のために1つの予備研究(研究実施計画の前倒し)を実施した。1. フィーディングステーション行動の個体間変動:黒毛和種繁殖雌牛のフィーディングステーション(FS)行動(FS訪問速度,FS当りのバイト数およびバイト速度)を測定した。バイト速度は,その個体間変動が放牧季節を通して固定的であり,採食地点の草高や個体の齢および体重とはほとんど関係しなかったことから,個性指標の1つとして捉えることができる可能性が示された。2. いくつかの指標に基づく個性評価:黒毛和種繁殖雌牛の個性について,5つの指標(逃避距離,採餌のために群から離れる距離,隔離拘束エリアへの入り易さのスコア,隔離拘束エリアでの反応のスコア,逃避速度)を用いて多面的に評価した。その結果,全ての指標において比較的大胆であると判定された個体が存在し,このような個体は,高度な草地管理・利用を実現するための群メンバーとして重要かもしれないと考えられた。また,ある指標では大胆であると評価されたが,他の指標では臆病であると評価された個体も存在し,個性を評価する上で複数指標による多面的評価を行うことの重要性が示唆された。3. 採餌における関連付けの持続期間ならびに社会的促進効果:採餌における関連付けの確立速度,持続期間ならびに社会的促進効果について,黒毛和種繁殖雌牛を用いて調査した。その結果,ウシの関連付けは1日で確立され,少なくとも約1年間維持されることが明らかになった。また,採餌における関連付けの社会的促進効果は,完全には検出されなかったが,組み合わされる動物の特質および個体間の相性が影響すると考えられ,グループの構成個体に着目して社会的促進効果を検討する重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「2つの研究目的」を達成するための「2つの研究段階」のうち,第1段階については,当該年度(平成23年度)の計画に沿って研究を実施できたのに加え,3年後(平成26年度)に予定されていた第2段階についても予備的な実験を実施することができたため。なお,予定よりかなり早くに第2段階の予備実験を実施したのは,実験に適した実験動物が利用できる機会に恵まれたためである(データを蓄積する絶好の機会であったため,当該年度の計画にはなかったが,予備実験として実施した)。
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今後の研究の推進方策 |
【平成24年度】 データを蓄積するため,また,加齢に伴う個性の変化の可能性を検討するために,平成23年度と同様の調査を行う。平成23年度からのデータをまとめて,個性の各特質の個体間変動の大きさおよび時間的持続性,特質間の相関関係などの観点から解析することにより,個性から見た群の成り立ちを把握・理解する手法の開発を試みる。【平成25年度】 データをさらに蓄積するため,また,加齢に伴う個性の変化の可能性を検討するために,平成23および24年度と同様の調査を行う。平成23年度からのデータをまとめて,個性の各特質の個体間変動の大きさおよび時間的持続性,特質間の相関関係などの観点から解析することにより,個性から見た群の成り立ちを把握・理解する手法を確立する。植生の定着までに時間を要するため,平成26~27年度に用いる草地の造成を開始する。【平成26年度】 前年までに明らかになった個体の個性をもとに,個性から見た構成を異にする実験牛群を人為的に編成する。同時に"空間的に不均一な植生・環境を有する草地"を人為的に創出する。実験牛群を草地に放牧し,草地の利用について,動物側(個体と群のレベル)と草地側から測定し,評価する。【平成27年度】 平成26年度と同様の調査を行い,データを蓄積する。得られたデータをもとに,ウシの個性を草地の管理・利用に応用する方法について探索・検討し,その効果を評価・検証する。特に,高度な草地管理・利用を実現するために有効な個性の特質,群構成などに焦点を当てて解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として実験資材の購入に充てる。
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