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2011 年度 実施状況報告書

外来牧草の雑草化リスクに及ぼす草地の種多様性の影響

研究課題

研究課題/領域番号 23580372
研究機関宮崎大学

研究代表者

西脇 亜也  宮崎大学, 農学部, 教授 (60228244)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード種多様性 / 外来植物 / 雑草化防止 / 暖地型牧草 / ニッチの空白 / 長期調査 / 実験生態学 / 温暖化
研究概要

Tilman et al. (1996)は、種の多様性が高いほど草地生態系の生産性、持続性、安定性が向上することを大規模野外実験によって明らかにしている。この種多様性が外来種の雑草化の成否に与える影響が大きいと考えて検証実験を行うことに本研究の特色と独創的な点がある。種多様性が高い場合にはニッチの空白が少ないので外来種の雑草化が生じにくいことが予想される。そして、この予想は、過去12年間の長期間の調査結果から予測されたものであることに大きな特徴がある。 外来牧草の雑草化防止における種多様性の影響を評価するためにはフィールド調査だけでは不十分であり、実証実験が必要である。そこで、種多様性の異なるシバ型草地の実験区を人工的に数多く設定し、その実験区内に導入した外来牧草の雑草化に及ぼす草地の種多様性の影響を検出する実験生態学的検証を開始した。外来牧草の雑草化の評価は、数年間の栽培期間中に定期的にモニタリングを行うことで種多様性の高さが外来牧草の雑草化防止の程度に与える影響を評価できると考えられる。初年目の結果は予測と矛盾しない物であり、在来種の密度や種多様性が高い処理区ほど外来牧草の雑草化が進行しない傾向が明らかとなってきた。この点は24年度以降も確認する必要がある。 また、GPS記録カメラを用いて日本各地の草地周辺環境における雑草の分布調査を行ったところ、都井岬だけでなく西南日本各地でもバヒアグラスやセンチピードグラス、カーペットグラスなどの暖地型牧草が雑草化している様子が確認された。この可能性としては、気候の温暖化、特に冬季の気温上昇が暖地型牧草の越冬条件を緩和したことが考えられた。 本研究の結果によって、種多様性の高い生態系を保全することは外来牧草の雑草化を防止する上で極めて重要であることが明らかになる意義があると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

外来牧草の雑草化防止における種多様性の影響を評価する目的を達成するため、2011年度には、1:1999年度から毎年(2000年度からは毎月)実施してきた宮崎県串間市都井岬のシバ優占草原における植生調査を継続し、外来暴走の雑草化の状態をモニタリングした。 次に、2:2009年度から実施してきた禁牧処理による外来牧草の制御効果を評価した。そして、3:種多様性と個体密度が外来牧草の雑草化に及ぼす影響を明らかにする目的で大規模なポット栽培実験を開始した。 最後に、4:このような暖地型の外来牧草の雑草化が都井岬だけで生じているのかどうかについて西南日本を中心に記録カメラを用いて日本各地の草地周辺環境における雑草の分布調査を行ったところ、都井岬だけでなく西南日本各地でもバヒアグラスやセンチピードグラス、カーペットグラスなどの暖地型牧草が雑草化している様子が確認された。この可能性としては、気候の温暖化、特に冬季の気温上昇が暖地型牧草の越冬条件を緩和したことが考えられた。 本研究の結果によって、種多様性の高い生態系を保全することは外来牧草の雑草化を防止する上で極めて重要であることが明らかになると判断され、順調に進展していると考えられる。 さらに、研究を進める過程で、ポット栽培した都井岬のメドハギやコマツナギが、一般のものとは異なり強い匍匐性を示すことが明らかとなった。これはわが国の放牧環境に適応した生態型(遺伝型)がはじめて確認された学術的な発見であると同時に、湿潤温暖な日本における持続的な放牧地牧草として極めて有望な遺伝資源の発見でもある。この点は「当初の計画以上の進展」であるが、今年度はこの点についてさらに確認を進めたい。

今後の研究の推進方策

今後も、外来牧草の雑草化防止における種多様性の影響を評価する目的を達成するため1:1999年度から毎年(2000年度からは毎月)実施してきた宮崎県串間市都井岬のシバ優占草原における植生調査を継続し、外来暴走の雑草化の状態をモニタリングする。 次に、2:2009年度から実施してきた禁牧処理による外来牧草の制御効果を評価する。そして、3:種多様性と個体密度が外来牧草の雑草化に及ぼす影響を明らかにする目的で大規模なポット栽培実験を継続する。 そして、4:このような暖地型の外来牧草の雑草化が都井岬だけで生じているのかどうかについて記録カメラを用いて日本各地の草地周辺環境における雑草の分布調査を行い、日本各地でもバヒアグラスやセンチピードグラス、カーペットグラスなどの暖地型牧草が雑草化しているかどうかを確認する。 さらに、昨年ポット栽培した都井岬のメドハギやコマツナギが、一般のものとは異なり強い匍匐性を示すことが明らかとなった。これはわが国の放牧環境に適応した生態型(遺伝型)がはじめて確認された学術的な発見であると同時に、湿潤温暖な日本における持続的な放牧地牧草として極めて有望な遺伝資源の発見でもある。この点は「当初の計画以上の進展」であり今年度はこの点についても、都井岬以外にもこのような生態型が存在しないのか、また、都井岬ではメドハギやコマツナギだけなのか?つまり、このような生態型の存在の有無が暖地型の外来牧草の雑草化に影響しないのかについてさらに検討を進めたい。

次年度の研究費の使用計画

1:宮崎県串間市都井岬のシバ優占草原における植生調査に関する調査旅費には、20千円×10回程度の計200千円程度必要となると考えられる。また、調査・現地実験資材などには約200千円程度必要となる。(約400千円)2:種多様性と個体密度が外来牧草の雑草化に及ぼす影響を明らかにする目的で大規模なポット栽培実験を行うが、これに必要な、栽培関係資材に約300千円、学生アルバイト謝金に約200千円必要となる。(約500千円)3:このような暖地型の外来牧草の雑草化が都井岬だけで生じているのかどうかについて記録カメラを用いて日本各地の草地周辺環境における雑草の分布調査を行い、日本各地でも暖地型牧草が雑草化しているかどうかを確認する目的での調査旅費に約600千円必要となる。(約600千円) さらに、昨年発見された極めて有望な遺伝資源であるメドハギやコマツナギがどのような性質を持つのかを明らかにする栽培試験と遺伝子型解析を開始したい。(約100千円)

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Carbon sequestration in soil in a semi-natural Miscanthus sinensis grassland and Cryptomeria japonica forest plantation in Aso, Kumamoto, Japan2012

    • 著者名/発表者名
      YO TOMA , KEVIN ARMSTRONG, J. RYAN STEWART , TOSHIHIKO YAMADA , AYA NISHIWAKI and FABIA ´ N G. FERNA ´ NDEZ
    • 雑誌名

      Global Change Biology / Bioenergy

      巻: 4 ページ: 566 - 575

    • DOI

      doi/10.1111/j.1757-1707.2012.01160.x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Discovery of natural Miscanthus (Poaceae) triploid plants in sympatric populations of Miscanthus sacchariflorus and Miscanthus sinensis in southern Japan2011

    • 著者名/発表者名
      Aya Nishiwaki et. al.
    • 雑誌名

      American Journal of Botany

      巻: 98 ページ: 154 159

    • DOI

      10.3732/ajb.1000258

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effect of Rj Genotype and Cultivation Temperature on the Community Structure of Soybean-Nodulating Bradyrhizobia2011

    • 著者名/発表者名
      Shiro et. al.
    • 雑誌名

      Applied and Environmental Microbiology

      巻: 78 ページ: 1243 1250

    • DOI

      10.1128/AEM.06239-11.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 口蹄疫発生後の処理に関する課題について:宮崎県(2010年)と英国(2001年)との比較2011

    • 著者名/発表者名
      西脇亜也・一木美紗
    • 雑誌名

      農作業研究

      巻: 46 ページ: 159 165

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Carbon budget and methane and nitrous oxide emissions over the growing season in a Miscanthus sinensis grassland in Tomakomai, Hokkaido, Japan2011

    • 著者名/発表者名
      Yo Toma, Fabian G. Fernandez, Syohei Sato, Miki Izumi, Ryusuke Hatano, Toshihiko Yamada, Aya Nishiwaki, German Bollero and J. Ryan Stewart
    • 雑誌名

      Global Change Biology / Bioenergy

      巻: 3 ページ: 116 134

    • DOI

      10.1111/j.1757-1707.2010.01070.x

    • 査読あり
  • [学会発表] 日本におけるススキ属植物の生育立地について2011

    • 著者名/発表者名
      西脇亜也・桑原翔太郎・茨木 靖
    • 学会等名
      日本植生学会
    • 発表場所
      神戸大学教育学部
    • 年月日
      2011年8月16日
  • [学会発表] 生殖隔離機構とメンター効果:ススキ属の場合2011

    • 著者名/発表者名
      田中有理佐・西脇亜也
    • 学会等名
      種生物学会
    • 発表場所
      人材開発センター富士研修所
    • 年月日
      2011年12月7日

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公開日: 2013-07-10  

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