研究課題/領域番号 |
23580374
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
吉田 剛司 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (00458134)
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研究分担者 |
金子 正美 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (00347767)
伊吾田 宏正 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (60515857)
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キーワード | ニホンジカ / 季節移動 / 農業被害 / 都市型農業 |
研究概要 |
ニホンジカが都市近郊に頻繁に出没しアーバンディアーと呼ばれ、最近では大きな社会問題となりつつある。都市圏での交通事故や都市近郊の農業被害が深刻化するなか、国内では都市に出没するニホンジカの生態は殆ど解明されていない。本研究では、困難とされる都市部でのニホンジカの生態捕獲を試みて、石狩平野における都市出没型シカの生態学的な特性(移動・食性・生存率)をテレメトリー追跡調査によって明らかにし、季節移動ルートの解明と詳細な土地利用との関連性を追究している。 当該年度に生態捕獲に成功したエゾシカに首輪型発信器を装着(5頭)して追跡を実施した。オス1頭と2頭のメスにはGPS型発信器を装着した。札幌市清田区の都市圏の農地(都市部に位置する農業試験場)で捕獲してGPS発信器を装着したオス個体は、冬季に支笏湖方面に移動していた。北広島市の国有林を越冬地とするメス2頭もGPS発信器の追跡結果から、越冬地(国有林)から野幌森林公園へ夏季に移動し、夜間から早朝にかけて有害駆除などが実施されない時間帯には、周辺のニンジン畑などの農地に頻繁に出没していた。JR線や国道12号、36号など幹線道路も横断していることが判明した。VHF発信機でのオス2頭の追跡では、札幌市厚別区の住宅地に位置する緑地に移動するなど、夏季に農地に移動していることが解明できた。 本研究では、札幌都市近郊の農地に出没するシカは、冬季(狩猟期間)は国立公園や国有林などの鳥獣保護区で越冬して、夏季に栄養価の高い作物を餌資源とするために都市圏に出没している。これまで、一般的に推定のみあった都市圏シカの移動形態であるが、実際にシカを追跡した事例はなく、本研究で解明できた移動ルートは今後の石狩平野におけるシカ対策の貴重な情報となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった6頭であったが予算削減後の計上にて可能となった4頭にGPS発信機の装着を試みた。既に3頭は追跡に成功した。VHF型発信機も当初より発注数を減らす必要があったが、これまでに5頭の追跡に成功している。次年度にも捕獲は可能であり、さらに現在はGIS情報を用いた空間解析を進めており、研究成果を最終年度には達成できる目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
これまで解明してきたシカの季節移動や生息地の利用状況を詳細なGIS情報で空間解析を進めて、都市域の農草地に出没するシカの生態を追究する。特に栽培作物や草地の規模に着目して、夏季に被害を発生させるシカの特徴のみならず、これまで推定の域でしか議論できなかった都市生態系に生息するシカの生態を学術的に明らかにすることによって、都市における緑地や農地の管理と個体群の維持管理を解明して、都市景観の資源管理を生態学的に推進する基盤情報を整備する。
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次年度の研究費の使用計画 |
GIS情報による空間解析とシカのモニタリングの継続によって、さらに研究レベルを向上させる。次年度は世界的に注目されるアーバンディアーに関する研究成果を積極的に学術会議に報告する予定である。
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