研究概要 |
平成23年12月に札幌市内でニホンジカのオス成獣(SPO)、平成24年4月に北広島市内でメス個体(D44)の捕獲、平成25年3月にメス1歳(D45)と5月にオス成獣(TIN)の生体捕獲に成功してGPS型首輪型発信器を装着して行動追跡を実施した。メス個体(D45)は、平成24年度と同様に北広島市の都市部に位置する国有林にて捕獲し、オス成獣個体は札幌市豊平区に位置する都市部で捕獲した。これら捕獲場所は、都市生態系に位置しており、国内では類のない都市域に生息するシカの追跡に成功した。平成24年度にGPS型首輪を装着した個体(D44)は、平成25年3月8日まで追跡でき、D45の首輪型発信機は、7月30日に追跡が不可能となった。オス成獣(TIN)は平成26年4月まで行動を追跡できた。受信間隔はD44とTINが3時間(1日に8点)、D45の受信間隔が6時間(1日に4点)とした。D44が2,028、D45は470、TINが2,027の位置情報を取得できた。石狩低地帯の西部で捕獲したメス個体は、昼間に林内を利用して、夜間に農耕地を利用する割合が高くなることが判明した。D45は特に傾向が顕著であり、昼間は約90%の割合で森林を利用しているが、夜間は約60%の割合で農耕地を利用していた。一方で、メスの行動圏面積は95%カーネル法で算出する530から610 haであったが、オスは、715 haに達した。都市圏に生息するシカも森林に生息するシカと同様にオスの行動圏が夏季に特に大きく、オスが札幌圏で頻繁に目撃される理由と一致した。季節移動は、オスで直線距離23kmの長距離を移動する個体もいたが、他の3頭は3から8.5 kmの移動のみで、比較的に長距離を移動することが解明されているエゾシカにおいては都市域農地に出没するシカは季節移動せず、栄養価の高い都市農地に依存していることが新たに判明した。
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