研究課題/領域番号 |
23580376
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
板橋 久雄 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 客員教授 (00280991)
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研究分担者 |
木村 信熙 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (00350174)
撫 年浩 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 准教授 (60434148)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マイコトキシン / ルーメン発酵 / デオキシニバレノール / ゼアラレノン / ルーメンプロトゾア |
研究概要 |
マイコトキシンの中で最も被害が大きく重要なデオキシニバレノール(DON)が牛ルーメン(反芻胃)内での発酵に及ぼす影響を試験管内培養実験により調べた。50mLの希釈ルーメン液に基質としてコーンスターチ(CS)またはセルロース粉末(C)を各1.5g加え、DONを40mg/kgDM添加し、39℃で6時間、嫌気的に培養した。CS添加はC添加に比べ、pHは低下し、ガス発生量は増加し、アンモニア濃度は低下した。揮発性脂肪酸(VFA)の中でプロピオン酸の比率はCS添加の方が高かった。DON添加により、ガス発生量、アンモニア濃度、VFA濃度はいずれも低下し、pHは高くなった。これらの影響はC添加の方が大きい傾向にあった。また、DONは培養時間が進むにつれて分解され、6時間後では、CS添加では10.5%、C添加では17.3%分解であった。これは、濃厚飼料給与時よりも、粗飼料給与時の方が分解は早まることを示している。 次に、マイコトキシン吸着のために開発されている6種の吸着資剤の効果を培養実験により検討した。基質は濃厚飼料+粗飼料とし、6時間培養を行った。マイコトキシンの中でアフラトキシンB1はほとんどの吸着剤で効果的に吸着され、ゼアラレノンもこれに次いで吸着された。しかし、DONはほとんどの吸着剤で吸着されなかったが、これは極性を持たないためと考えられた。これまで吸着剤の効果については不明な点が多かったが、本研究により、酵母マンナンオリゴ糖、炭酸カルシウム、グルコマンナンポリマーなどが比較的すぐれていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイコトキシンがルーメン発酵に及ぼす影響が明確にされていない状況で、最も重要であるデオキシニバレノールについて培養実験により調べることができ、さらにその分解率を測定し、粗飼料給与時の方が分解が早いことを示した点は今後の毒作用の低減をはかるうえで重要と考えられる。 また、マイコトキシンの吸着剤として多くの資剤が開発されているが、これまで吸着の効果については不明の点が多かった。本研究によりマイコトキシンの種類により吸着剤の効果は異なること、吸着剤の性質によっても効果の程度に差が生じることを明らかにした点は、今後実用上でも意義あるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
マイコトキシンのルーメン内分解を高めることが大きな目標であるが、飼料の種類(粗飼料と濃厚飼料の比率など)の影響を培養実験によりまず明らかにする。また、分解に関与する微生物の影響を特にプロトゾア(繊毛虫)に焦点を当てて究明する。さらに、マイコトキシンの分解にはプロバイオテックス(生菌剤)やプレバイオテックス(オリゴ糖など)に促進効果があると考えられるので、それらを選択し、効果的な分解促進法を開発する。これらについては次年度は培養実験で行うが、最終的には動物実験により効果を実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度は主に培養実験を行うが、供試マイコトキシン(デオキシニバレノール、ゼアラレノンなど)は高価であり、試薬代のかなりを占める。また、試料の分析ではガスクロマトやキット類を用いるが、これらの消耗品類にも使用する。さらに、一部のマイコトキシンは定量分析に熟練を要するので、分析機関に依頼する予定でsる。 さらに、国際学会(アジア大洋州畜産学会議)がタイで今秋予定されており、これに参加し、これまでの成果の一部を発表する予定である。
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