研究課題/領域番号 |
23580378
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
植竹 勝治 麻布大学, 獣医学部, 教授 (00312083)
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研究分担者 |
田中 智夫 麻布大学, 獣医学部, 教授 (40130893)
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キーワード | 牛 / 福祉 / 初乳 / 免疫 / ストレス / 死亡率 |
研究概要 |
1.「新生子牛の福祉:死亡率に焦点をあてた総説」を次の通りまとめた: 子牛の死亡率の抑制は、畜産農家にとって家畜福祉のみならず、生産性向上のためにも、極めて重要である。子牛の高い死亡率は、大規模化、飼育管理者の職務遂行能力、厳しい気候、出生後5週齢までの若齢期間と関連している。死亡率抑制の大前提は、受動免疫移行不全の早期発見とそれに対する処置であるけれども、急性下痢をはじめとする感染性疾患による新生子牛の死亡率は、これらの物理的および心理的ストレッサーの存在下でより高くなる。このことから、2次的に影響するこれらの環境要因についても、畜産農家は看過しないことが勧められる。治療よりも予防のためには、家畜福祉のみならず、生産性の観点からも、環境の質の向上が図られるべきである。 2.「分娩前の母牛のストレスレベルが出生直後の子牛のストレスレベルを決定づける」ことを次の通り明らかにした: 8頭の妊娠牛を分娩前7日に分娩房に収容し、分娩前7日と分娩後1, 2, 3日に採血した。子牛についても出生後6時間と1, 2日に採血し、血中と初乳中のコルチゾールおよびIgG濃度を測定した。分娩前の母牛の血漿コルチゾール濃度が高いほど、出生後の子牛の血漿コルチゾール濃度も高かった。パス解析では、出生後6時間における子牛の血漿コルチゾール濃度が分娩前7日の母牛の血漿コルチゾール濃度に大きく依存することが示された。一方、初乳中コルチゾール濃度は分娩前の母牛と出生後の子牛のいずれの血漿コルチゾール濃度とも相関しなかった。血漿および初乳中IgG濃度も、母牛と子牛の間で、コルチゾール濃度のような明確な相関がみられなかかった。これらの結果は、母牛から新生子牛へのストレス伝播が初乳ではなく、胎盤を通じて生じていることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度(初年度)は、協力機関との調整に時間を要し、実験の開始が遅れたが、平成24年度については、計画通り、実験を遂行することができた。さらに、文献調査を加え、それを総説としてまとめることができたことから、おおむね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
ホルスタイン種牛については、昨年度までの研究成果を受けて、当初の計画にはなかったものの、子牛の受乳成功には分娩房の敷料の厚さが重要であることが判明したことから、従来の飼育方式よりも敷料の量を増やして、その効果(子牛の受乳成功および受動免疫移行)を確認する。 また、当初の予定通り、ホルスタイン種牛と黒毛和種牛の母子について、分娩(出生)前後における母子双方の健康・生理指標について比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
供試牛用飼料、採血・サンプル保存用器具類、血漿および初乳中の生化学分析試薬(コルチゾール、免疫グロブリンのEIA分析キット)ならびに、調査場所への出張旅費 および成果発表のための学会出張旅費として使用予定
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